セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

Nokia、東京六本木にローカル5Gのラボを開設

|

通信インフラ系機器大手のNokiaが東京六本木の先端技術センターにローカル5Gテスト局を開局した(図1)。同社がローカル5Gを実験できる試験局の免許を取得したことで、ローカル5Gの実証実験のプラットフォームを提供する。Lab as a Serviceと呼んでいる。そこには通信機器をはじめ、機器を操作するコンピュータとソフトウエア、サービスなどを揃えている。

図1 Nokia先端技術センターにローカル5Gの実験設備を備えた 出典:Nokia

図1 Nokia先端技術センターにローカル5Gの実験設備を備えた 出典:Nokia


Nokiaは通信基地局で使う通信機器をモバイル通信オペレータ(日本ではNTTドコモやKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなど)に納入する通信機器メーカー。ローカル5Gは、5Gモバイル通信を公衆網ではなく私企業や公共事業者などの施設内だけで通信する技術であり、誰もが使う5Gモバイル通信とはつながっていない。

ローカル5Gをちょっと試してみようと思っても、そう簡単に設備のある所で実験できない上に、実際にローカル5Gに使う周波数の電波を許可申請するのに手間がかかる。しかし、Nokiaの先端技術センターに来れば簡単に試すことができる。基地局のアンテナ設備からRF無線回路、ベースバンド機器、交換機に相当するスイッチ機器などハードウエアは揃っている上に、デモに必要なソフトウエアもパソコンに組み込まれている。

今回のローカル5G公開の場において、ハードウエアからソフトウエア、サービス、ディストリビュータなどさまざまな業種の企業18社とパートナー契約を結んでおり、パートナー企業も参加した(図2)。Nokiaにはローカル5Gの顧客は世界中に450社以上いるという。


図2 今回のローカル5G実験設備の公開に参加したパートナーたち

図2 今回のローカル5G実験設備の公開に参加したパートナーたち


5Gモバイル通信のスマートフォンでは日本メーカーの存在感はないが、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクなどの5Gへの取り組みについて、Nokiaの社長兼CEOのPekka Lundmark氏(図3)は「日本は5Gでは先端に位置し、ローカル5Gに興味を抱く企業は多い。2022年は企業のプライベート通信ネットワークが立ち上がる年」だと見ている。ローカル5Gは企業の生産性の向上やSDGs(持続可能な17の開発目標)、社員の安全、セキュリティ保護、信頼性向上、業績向上に役立つとしている。


六本木先端技術センターでのローカル5G実験にフィンランドから駆け付けたNokiaの社長兼CEOのPekka Lundmark氏

図3 フィンランドから駆け付けたNokiaの社長兼CEOのPekka Lundmark氏


ローカル5Gはいち早く導入したドイツのLufthansa航空や、従業員4万人のトルコの大手製造業Arcelik社、日本のオムロン滋賀工場などの事例を紹介した。Lufthansaはジェットエンジンの検査を仮想テーブル上で行い、AR(拡張現実)などでエンジンタービンのわずか0.3mmの誤差を検出する。Arcelikでは自動運転に使うビデオを解析するシステムでAR/VR(仮想現実)でデジタルツインを作製し解析データを5G通信で送っている。日本でもオムロンがフレキシブル生産ラインの構築・利用に5Gを使っている。日本では名前は出せないが自動車メーカーともローカル5Gを利用しているという。

(2022/05/17)

月別アーカイブ