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日本市場に合わせ、筑波工場を拡張したLittelfuse

保護回路デバイスに強い米Littelfuse(リテルヒューズ)が、日本市場を強化するため筑波工場内の機能を拡張、1億円を投資したことを明らかにした。同社は受動部品の保護回路素子の製品ポートフォリオが広く、いろいろなバリエーションを提案できるという強みを持つ。日本は自動車産業が強いため、日本拠点を充実させた。

図1 Littelfuseの筑波工場 出典:Littelfusepr

図1 Littelfuseの筑波工場 出典:Littelfusepr


筑波工場での設備投資は生産と解析・検査の両面について行ってきた。生産面では、これまでメキシコ工場で製造してきたブレードヒューズ(電極端子が平らなタイプ)とバッテリヒューズモジュールの一部を日本で生産する。これまではこれらの保護回路部品を輸入してからも筑波工場で出荷前の最終検査を行ってきた。今後は日本で生産、検査を行えるため、自動車OEMに加え、ティア1サプライヤにも納期と品質の両面でタイムリーに出荷できるようになった。

また筑波工場内のテクニカルセンターでは、3次元X線透過検査装置(部品のCTスキャナーのようなもの)や、大電流電源装置などを揃えた。さらに検査スタッフを新たに4名、専門エンジニアを8名と倍増させた。これにより、輸入品の解析と検査を即座に行えるようになった。大電流電源装置は、実は電気自動車(EV)の大電力化に合わせている。例えばトヨタ自動車のEVでは最大±1200Aの大電流を検出できるような電流センサの要求があり、デンソーでは最近開発したことを明らかにした。

保護回路部品では、受動型のヒューズやセラミックバリスタ、リードスイッチなどに加え、復帰型のポリマーPTCやバイメタルミニブレーカー、さらにTVSダイオードやダイオードアレイ、保護用サイリスタなどがある。こういった製品群の多くにLittelfuseはトップシェアを持つ。

Littelfuseの製品は保護回路の他に、車載用受動部品やパワー半導体、スイッチ、センサなどの製品がある。同社の狙う分野は輸送部門(自動車関係)、産業用、そしてエレクトロニクスの3部門。いずれの分野でも保護回路素子が要求されるようになってきている。

これまで日本は、保護回路やセキュリティ製品にコストをかけることを嫌ってきた。それらがなくても機器はしっかり動作するからだ。保護回路やセキュリティ製品はあくまでも万が一のための保険的な部品であり、コストになっている。欧米では、万が一の最悪の時にかかるコストと比較すると、例えば10年間は異常なく動作できる方が安い、と考える傾向がある。このため一時的なコストがかかっても受け入れてきた。しかし、日本では保護回路とセキュリティ製品は長い間、受け入れられないことが多かった。


ジャパンリージョン2021年結果 出典:Littelfuse

図2 リテルヒューズジャパンの2021年の年成長率 出典:Littelfuse


しかし、余計なコストとして考えずに安全を考える風潮が少しずつ日本でも出てくるようになった。リテルヒューズジャパンは、2021年の売上額が全体で前年比42%成長となった(図2)。最も成長率の低い輸送機器でさえ37%も成長している。半導体をはじめとする部品不足を反映して、長期間動作できる方を選ぶ企業が増えたのかもしれない。

パワー半導体製品は、同社が、米国とオランダに本社を持つIXYS社を2017年に買収し手に入れた。主に1000V以上のIGBTやサイリスタ、MOSFETなど大電流の製品が多く、電力や鉄道など産業用機器向けの製品を揃えている。半導体は需要がいまだにタイトなので、競争できると見ている。

(2022/04/14)
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