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市民密着型の新研究所をボッシュが設立、2024年竣工へ

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自動車のティア1サプライヤーの大手、Robert Boschの日本法人ボッシュが横浜市都築区に新しい研究開発施設を建設すると共に、地域住民のための都築区民文化センターも併設する、と発表した。東京近郊8カ所に散らばっている研究拠点をここにまとめ、各事業部を横断する組織とする。エンジニアも多数採用する。

図1 ボッシュの研究拠点となる新社屋(奥の白い建物)と都築区民文化センター(手前の茶色い建物) 出典:ボッシュ

図1 ボッシュの研究拠点となる新社屋(奥の白い建物)と都築区民文化センター(手前の茶色い建物) 出典:ボッシュ


ボッシュが3億ユーロ(約390億円)を投資することを決めた最大の理由は、日本での事業展開をより強固にするため、と同社代表取締役社長のクラウス・メーダー氏は述べている。Boschが日本で事業を開始したのは1911年で、横浜で始めたため横浜にはなじみがある。新社屋が完成すれば、車両制御や安全システム、運転支援/自動運転、HMI(ヒューマンマシンインターフェイス)、車載電子部品、車載ソフトウエア、コネクテッドサービス、エンジニアリング、アフターマーケットなどの事業部とグループ企業を集約する。現在渋谷にある本社オフィスも都筑区に移転する。ただし、1990年に開設した都筑区研究開発施設における、パワートレイン関連の研究開発と二輪車およびパワースポーツ事業のグローバル本部としての機能は継続する。埼玉県の東松山工場も継続する。

自動車はこれからACES(Autonomy, Connectivity, Electricity and Sharing:CASEともいう)という流れに加え、ソフトウエア化、パーソナライズ化なども加わり、変わっていくことは間違いない。これまでのクルマづくりから大きく変える必要がある。世界の自動車産業をリードする立場にある日本の自動車産業の拠点の一つに当たる横浜に研究開発本部を作ることはグローバルに見て意味がある。TSMCが横浜に、7nm、5nm向けのデザインセンターを設けていることに加え、Appleも横浜に研究所がある。横浜はグローバル企業の研究拠点の一つになりそうだ。

こういった未来志向のメガトレンドでは、これまでの車両部門、車体シャーシ部門、コックピットと呼ばれるインフォテインメント部門、ワイヤーハーネス部門などクルマの各部門が相互に関係してくる。Boschは2021年にこういった部門間をまたぐプロジェクトを遂行しやすくするため、クロスドメインコンピューティングソリューションズ事業部を立ち上げた。こういった事業部門に相当する研究開発部門は、ACESをベースとする未来のモビリティを実現するために欠かせなくなる。

今回ボッシュが作る区民文化センターは、地上4階、地下1階で、災害にも強い免震構造を採用する。2階には約300席のホールを、1階にはギャラリー、リハーサル室等を設け、バリアフリー設計とする。2024年9月の竣工後に横浜市に売却し、2024年度中(2025年3月まで)の開館が予定されている。


図2 二つのビルの間に地域住民のために憩いの空間を作る 出典:ボッシュ

図2 二つのビルの間に地域住民のために憩いの空間を作る 出典:ボッシュ


このプロジェクトの事業コンセプトとして「都筑の文化とグローバルテクノロジー企業の融合による、新しい未来型文化拠点づくり」を掲げ、新社屋と区民文化センターの相乗的な賑わいを創出し、地域活性化につなげていく(図2)。

ボッシュは、2020年にカーボンニュートラルを実現したという。2030年にはさらにCO2を15%削減する目標を掲げている。このため、この研究開発拠点では固体酸化物系燃料電池の実証実験を2024年に始める。これによって発電量を2026年までに最大数百kWに増やす計画だ。もちろん新社屋ではソーラーエネルギーを利用し、年間50MW時の電力を発電し、自動換気システムによって冷房や機械換気の電力を年間68MW時削減するという目標を定めている。その他雨水の再利用による水量の削減や、太陽からの日射量を半減させるルーバーを設置するなどの対策も打つ。

(2022/03/10)

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