セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

固定ワイヤレス向け5G通信用SoCチップをMediaTekが出荷

|

5G通信が光ファイバ並みのデータレートを提供できることから、光ファイバに代わる家庭用固定ワイヤレス需要で大きく伸びている。日本でも意外と需要が期待されており、家庭用やモバイルの5Gルータ需要を見越し、台湾MediaTekは5G向けチップセット「T750」製品をリリースした(参考資料1)。すでにNECプラットフォームズが採用した(参考資料2)。

世界のFWA接続数の推移 / Ericsson Mobility Report 2021

図1 固定ワイヤレス通信加入者は今後5Gで成長 出典:Ericsson Mobility Report 2021


本来、ワイヤレス携帯通信の規格であったはずの5G通信が、意外にも固定電話向けに需要が拡大している。EricssonのMobility Reportによると、この2年で固定ワイヤレスを扱う事業者が倍増した。さらに2026年までに固定ワイヤレス通信(FWA: Fixed Wireless Access)の加入者が年率20%の勢いで伸びそうだという見込みもある。図1では、固定ワイヤレスのLTEが飽和しても5Gが急速に伸びていく様子を示している。

日本における光ファイバは、景観よりもコストが優先され、電柱伝いに張り巡らされてきた。このため、固定ワイヤレス通信は外国の話だろうと見られていた。しかしラストワンマイルの手段として日本でも期待されている。光ファイバがまだ敷設されていない地方や、新しい住宅団地などでの需要が見込まれる、として携帯基地局大手のNokiaは受信用家庭ルータを製品化した(図2)。今回、Nokiaが出荷できるようになったのは、比較的安価なMediaTekのチップが入手できるようになったからだとしている。ただし、新製品T750かどうかについては明らかにしていない。


Nokia FastMile 5G gateways

図2 Nokiaが製品化した固定ワイヤレス向け家庭用ルータ(円柱状の装置)


Nokiaの製品リリースの直後、MediaTekがT750を発表し、NECのグループ会社がそれを採用した家庭用ルータとモバイルルータを発表した。光ファイバと違って工事は不要であり、電柱のない山の中でも通信業者の電波が届けば5Gを利用できる。モバイルルータはauグループのKDDI、沖縄セルラー電話、UQコミュニケーションズから販売され、11月にはホームルータも発売される。

T750は、サブ6と呼ばれる6GHz以下の周波数帯で使われ、ルータとしてWi-Fiに変換されて家庭内のパソコンやスマートフォン、プリンタなどと接続できるようになる。

このT750チップセット(図3)は、セルラー(5G/LTE/WCDMA/GSM)モデムやCPUなどを集積したSoCであるMT6890に加え、WLANや有線LANチップ、PM(パワーマネジメント)IC、DRAM、WWANなどのチップからなる。DRAMと有線LANの2.5G PHYチップは他社製。


T750 チップセット構成 / MediaTek

図3 T750チップセット 出典:MediaTek

SoCチップMT6890は、TSMCの7nmプロセスを使って製造され、ArmのCortex-A55が4コア集積されている。加えて、グラフィックスやネットワークエンジン、セキュリティエンジンも搭載されており、外部からの攻撃にも対処する。最近、各社から発表されるSoCには必ずと言ってよいほどセキュリティ回路(認証や検出、暗号化など)が搭載されるようになってきている。

参考資料
1. "MediaTek Advances its 5G Platform with New T750 5G Chipset for Fixed Wireless Access Routers and Mobile Hotspot CPE Devices", MediaTek (2021/09/03)
2. 「NECプラットフォームズ、MediaTekと5G通信機器開発で協業」、NECプラットフォームズ (2021/10/14)

(2021/11/11)

月別アーカイブ