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再認識;保護回路部品は万が一のリスクを回避できる安心を提供

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電子回路やICが電圧サージや過電流、過熱で壊れないようにする保護回路は、本来なくても回路やICは動作する。にもかかわらず余分なコストを払っても万が一の災害に備えるのが保護回路である。しかし、日本では万が一に備えた保護回路は余計なコストと考える風潮が強い。このため保護回路を付けない電子回路が多かった。Littelfuseはそのような逆境の日本市場で存在感を示し始めている。

図1 Littelfuseジャパン合同会社代表の亥子正高氏

図1 Littelfuseジャパン合同会社代表の亥子正高氏


保護回路部品を製造する米国のLittelfuse(リテルヒューズ)社は、創業が1927年の会社だが、日本ではこれまであまり受け入れられなかった。同社と同様、保護回路部品を扱っていたTyco Electronics社も日本市場では苦戦していた。保護回路部品が、グローバル市場で標準となっているのにもかかわらず、日本企業はわずかなコスト増の部品さえも嫌うからだ。

少しずつ日本市場でも変化が起きたのは、グローバルにも販売するような産業向け製品を出荷し始めるようになったからだ。日本市場で販売する場合は、保護回路なしでも販売できた。保護回路のための余計なコスト増を嫌ってきた。海外向けの産業機器や基地局の通信機器には保護回路はマストである。雷によるサージや、特殊な要因が重なって過電流や過熱するリスクは配慮するのが当たり前だからだ。日本で強いクルマ向けでは採用が早く、車載向け保護回路部品の売り上げが日本法人全体の40%を占めるという。これをさらに高めていきたいとLittelfuseジャパン合同会社代表の亥子正高氏(図1)はいう。

Littelfuseは、保護回路部品の中でも正の温度係数を持つポリマーPTC(Positive Temperature Coefficient)のパイオニアであり、グローバルの市場シェアは、バッテリ用のこの製品は60%にも達するという。標準品でも45%と高い。ポリマーPTCはヒューズと違って、過電圧がかかってもバリスタのように正負双方向の高い電圧で電流が流れるが断線するわけではないため回復できるという特性を持つ。また、元々ヒューズの製造販売からスタートしたこの会社は、ヒューズのシェアが34%と大きい。

亥子氏は、ポリマーPTCの市場シェアは日本でも高いため、これを軸として横展開を図っていくとしている。日本で3.11の東日本大震災以降はBCP(事業継続計画)が叫ばれ、少しずつ安全性やリスク保護に対する考えが根付いてきつつあるとして、受注が伸びていると同氏は語る。

保護回路の重要性はますます高まっている。3月19日に火災事故を起こしたルネサスエレクトロニクスの会見では、原因がメッキ漕の陽極電極の配線に電流集中が起こり発火、断線したものの火花が近くの樹脂に燃え移ったためとされていた。回路ブレーカーは付いていたものの作動する前に発火したという。だが、電流集中の恐れがある陽極の配線になぜ過電流保護あるいは過熱保護回路を入れなかったのだろうか。わずかなコストで安全が担保できることをメッキ漕装置メーカーは知らなかったのだろうか。ルネサスは現在メッキ業者に問い合わせ中だと回答した。

Littelfuseは茨城県の稲敷郡に国内の生産工場を持ち、ポリスイッチなどの保護回路部品を生産している。亥子氏は、日本市場の売り上げが現在は全社の5〜6%しかないが、今後10%に持っていくことが目標だとしている。

(2021/03/30)

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