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Nokiaのローカル5Gエコシステムに集まった日本企業たち

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5Gネットワークを自分の工場や敷地内で運用する「ローカル5G」には、さまざまな企業の協力、すなわちエコシステムが必要。通信インフラが得意なNokiaは、日本企業だけを集めたエコシステムを構築、ローカル5Gのサービス提供に乗り出した。

Nokia L5G エコシステムマップ

図1 Nokiaが提供するローカル5Gエコシステム 出典:Nokia


Nokiaを中心とするローカル5Gエコシステムに参加する日本企業は、日鉄ソリューションズ、オムロン、日立国際電気、コネクシオ、シャープからなる(図1)。データを収集するパブリッククラウドは、AWS(Amazon Web Service)とMicrosoft Azureのプラットフォームを利用する。それぞれ、アプリケーションソフトから産業ロボットなどのデバイス、低遅延のゲートウェイや端末、各種センサなどを担当する。各社の営業マーケティングを利用し、各社のユーザ現場とも連携、さらに実証実験やデモを行う各社の施設も利用し、顧客のローカル5G導入を支援する。

欧州では、ローカル5Gは単なるプライベート無線ネットワークの延長にすぎず、フィンランドに本社を構えるNokiaは、プライベートLTEの時からすでに222社・団体の顧客を実績として持っている。航空業界などの輸送では41社、エネルギーは62社、行政は58団体、製造業26社、その他33社などの顧客を持っているという。

デジタルトランスフォーメーション(DX)では、センサからのデータを集め、管理、保存、解析、可視化などの作業を行うためにエッジであれ、パブッククラウドであれ、コンピューティングが必要となる。通信機器メーカーであるNokiaは、ローカル5Gに必要な通信機器だけではなく、データを管理・処理するためのソフトウエアプラットフォームも提供する。ローカル5Gへの接続と自動化のためのエンド-ツー-エンド(E2E)プラットフォームNDAC(Nokia Digital Automation Cloud)は、エッジコンピュータと通信機器を結び、さらに各工場間をクラウドで管理する。

Nokiaは電波の到達距離が20~100mのピコセル機器(屋内利用)から、500m~5kmのマイクロセル(屋内外利用)機器、さらに30km以内のミニマイクロセル(屋外)機器、50km以内のマクロセル(屋外)機器を揃えており、工場だけではなく、飛行場や港湾などの広大な敷地での応用にも使える。ネットワークとサービス運用を管理するNDACは、通信機器やデバイスを管理するだけではなく、NDACカタログと呼ぶ管理ツールの役割を持つ(図2)。接続方法や、産業用のコネクタも含んでおり、このプラットフォームを実装することで、運用しやすくする。他社のアプリケーションも近日中に公開するという。


NDACのカタログは、単なるコネクティビティを超えた価値を提供

図2 NDACツールで運用管理 出典:Nokia


各種のセンサやPLC(Programmable Logic Controller)、サーボモーターなどのアクチュエータ、ロボットアームや安全機器を手掛けるオムロンは、5G導入によりレイアウトを自由にできる生産ライン、人の作業効率改善などが見込めるとしている。オムロンは1~10m範囲の製造現場をカバーするという。

伊藤忠商事の関連会社であるコネクシオは、これまでもIoTゲートウェイ機器を提供してきたが、5Gのゲートウエア機器だけではなくソフトウエアも開発、ソリューションとして提供する。ローカル5G対応ゲートウェイはGPSを装備しており車載にも対応する。しかもNDACとも連携し、エッジコンピューティング能力も提供するという。PLCやセンサ類とも接続する。

シャープはローカル5Gルータを提供する。28GHz帯と4.7GHz帯のマルチバンド無線対応の上、有線端子としてギガビットイーサネットとも接続できる。

システム運用会社の日鉄ソリューションズは、日本製鉄室蘭製鉄所で、ローカル5Gの実証試験を2020年8月から開始している。広大な作業現場で作業者の一人作業が増えてきており、作業者の体温や脈拍数、外部気温、位置などを常に計測しており、作業者の安全確保に利用している。それらのデータ収集・管理などを行う安全見守りソリューションと呼ぶソフトウエアプラットフォームを使って、作業者の安全をチェックしている。

日立国際は、ローカル基地局の設備や屋外アンテナなどの機器に加え、5G協創ラボを設置し実証実験できる体制を整えている。例えば鉄道の駅で目の不自由な方や泥酔された人がホームから転落しないようにセンサで検出、事故を防ぐといった利用シーンを想定している。ビデオカメラを利用して、駅構内でのエッジAIなどのコンピューティングと共にアラートを鳴らしたり、列車を緊急停止したりできるようにする。日立国際は、いろいろな実証実験を通して、エッジAIを搭載したカメラの試作機を作り、21年度には製品化する予定である。

Nokiaは、日本企業のエコシステムを活用し、今すぐにでもローカル5Gに実証実験を開始できるという自負を持つ。ローカル5Gは巨大な設備を持つ再生可能エネルギー分野や農業などでも、デジタルトランスフォーメーションで自動化や生産性向上につなげることができる。期待は大きい。

(2020/12/11)

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