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パナソニック、高齢者介護にIoTデータを活用、介護の負担軽減へ

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パナソニックが在宅介護の見える化事業に乗り出している。センサを用いて、在宅における要介護者のデータをリモートで取得できるようにする事業である。65〜74歳の前期高齢者の要介護認定率は4%だが、75〜84歳の後期高齢者となると19%に跳ね上がる(図1)。85歳以上となれば58%に達し、介護専門職の負担は増大する。これをデジタルで減らすのである。

在宅介護とは 高齢者の姿と在宅介護の質向上

図1 要介護者は年齢と共に増加する 在宅介護の質を向上させることで本人のQOS向上と財政負担の軽減が狙い 出典:パナソニック


在宅介護を受ける高齢者が1週間(土日を除く実質5日)に1回6時間のデイサービスを2日間利用し、残りの3日間はヘルパーが1時間付くとしても、介護専門職が高齢者を見ている時間は7日間の内わずか10%しかない。つまり90%の時間をどのように生活(食事・水分摂取・排泄・睡眠・活動)しているのが把握できない。水分を取りなさいと口頭で言っても実際にはつかめない。

そこで、赤外線センサと扉の開閉センサを使って、高齢者の活動状態を24時間把握し、ケアプランを改善していくという実証実験をパナソニックは宮崎県都城市で2019年10月から行ってきた。今回、この実験を継続するだけではなく、東京都品川区でも新たに実験を追加することになった。この1年間、4名の高齢者について行ってきた結果、ケアマネージャーの評価も本人と家族の評価も改善傾向にあることがわかった。

これまでの実験では、飲食、活動、排泄、休息、という生活リズムを把握するために部屋の扉に開閉センサを設置し、寝室とトイレ、ダイニングなどに赤外線センサを置き、活動データを取ってきた。赤外線センサだと、人間の体温を測定し、人間がいるかいないか、立っているか寝ているか、という程度の不鮮明な姿を捉えるだけなので、プライバシーは守られる。またドアの開閉はトイレやダイニングに行くことを確認できる。さらに高齢者本人には歩数計などの機能の付いた活動量計を持たせ、何歩歩いたかを可視化させ興味を持たせることで、活動量が増えるという効果があったとしている。

ケアプランとして、活動量計で本人の役割を認識、支援し、日常的に水分を取るように支援する。水分摂取と活動継続の大切さを高齢者本人に継続的に説明し、自覚させるという。さらに排泄が適切に行われるように支援し、高齢者の生活リズムを整えることで排泄課題を解決する。在宅で健康的な生活を送れるように支援することで、デイサービスの回数を減らすことができたとしている。


第2期実証 センサー設置事例

図2 センサの設置事例 ドアの開閉と人感センサで高齢者の健康をチェック 出典:パナソニック


10月から始まった今回の追加実験で、都城市では認知機能が低下している事例に、品川区では生活実態がわからない事例に重点を置くとしている。センサを図2のように設置しあらゆる部屋の出入りの実態を把握する。

すでに事例が出始めてきており、センサデータのログ(図3)から、トイレの回数が多い人は、夜中にも2時間おきくらいでトイレに行くことから睡眠時間が短くなる。その逆に別の人は、トイレの階数が1日に6回と正常で睡眠もたっぷりとれていることがわかる。ヘルパーが来るときは頻繁に動いており、それ以外は休息していることがわかる。


第2期実証 見えてきた高齢者の生活リズムとお困り事とは

図3 センサからのデータログの事例2件 出典:パナソニック

パナソニックは、こういったデータを蓄積し、近い将来AI(機械学習など)でデータを学習させ、最適なケアマネジメントプランを構築すると意気込む。こういったデジタルデータを活用することで、ケアマネージャーの負担を減らし、介護者不足に対応していく。加えて、IRセンサだけではなく、ミリ波のような超高周波電波を利用して呼吸数や心拍数を非接触で測定できる技術も採り入れてケアプランの精度を上げたいとしている。

(2020/12/09)

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