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政府との結びつきを強化するIntel、華為への許可はその背景か

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Intelは、米国連邦政府との結びつきをますます強めている。DoD(国防総省)だけでなくDoE(エネルギー省)とも共同プロジェクトを進めており、DoDからはSHIP(State-of-the-art Heterogeneous Integration Prototype)プログラムの第2フェーズを勝ち取った。DoE傘下のSandia Labとニューロモーフィックコンピュータで提携した。米国の休日「National Manufacturing Day」において初めてのメガファブとなるFab42をオープンした。

図1 Intelが公開した最新のファブFab42 左側の建物はこれまでのFab32、Fab22、Fab12と続いている 出典:Intel Corporation

図1 Intelが公開した最新のファブFab42 左側の建物はこれまでのFab32、Fab22、Fab12と続いている 出典:Intel Corporation


IntelのCEOであるBob Swan氏はFab42の開設を祝して、次のように述べている。「アリゾナ州での工場で1万2000人のハイテク従事者の雇用を生んできた。新工場Fab42では70億ドル(7350億円)を投資し、すでに3000人の社員を雇用した。工場の建設には総勢1万人が係わった。Fab42は従来の3工場ともネットワークで結び、最初のメガファブとなる。これまで合計230億ドルをアリゾナ工場に投資してきたことになる。アリゾナ州立大学によるとアリゾナ州の地域経済には83億ドル貢献している」(参考資料1)。

IntelがDoDから勝ち取ったSHIPプログラムでは、Intelの製品チップを利用してSiP(System in Package)で政府のICとして提供する。IntelのCPUやASIC、FPGAなどのチップを一つのパッケージに入れシステムを構成する。米国の防衛産業がIntelの最新製品を駆使して国家安全保障向けのエレクトロニクス製品を作ることになる。ここには専用のハードウエア回路(FPGA)とソフトウエアを組み込むことができる。 Intelが持つパッケージング技術には、3D-IC技術のFoveros、チップ間をシリコン配線チップでつなぐEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)、さらにFoverosとEMIBの両方を組合わせるCo-EMIBが使える。

米国電子産業のメディアFierce Electronicsの10月10日の記事(参考資料2)によると、今回の第2フェーズのSHIPプロジェクトでは1億4000万ドルの補助金がつき、2019年の第1フェーズでは1693 万ドルだったため、合計1億5600万ドルが付いたことになると見積もっている。

IntelとDoEとのコラボレーションでは、DoE傘下のArgone National Laboratory(アルゴンヌ国立研究所)にエクサスケールのスーパーコンピュータ「Aurola(オーロラ)」の共同開発で、装置だけではなくアプリケーションも含め、科学計算問題をはじめとする宇宙や気象モデル、創薬開発などの複雑な問題を解くのに使われる。一人当たり10秒かけて80億人が解くのに10年かかるという問題をわずか1秒で解くという。DoEは、エクサスケールという超巨大な問題解決だけではなく、人間の頭脳をモデル化するニューロモーフィックコンピュータや量子コンピュータの開発もIntelと共同で行うとしている。コンピューティングに加え、AIやソフトウエア開発のエコシステムへとつなげていく。

さらに今回、Intelは、やはりDoE傘下のSandia National Laboratory(サンディア国立研究所)とニューロモーフィックコンピュータの開発で3年間のパートナーシップを組んだと発表した。Sandia Labは、5000万ニューロンのIntelのLoihiベースのニューラルシステムを使って研究を始める。IntelのLoihiチップを搭載したボードはすでに納入している。共同研究により10億ニューロン相当のニューロモーフィックコンピューティングを目指す。Intelは最近1億ニューロン相当のシステムを開発している。

Intelが政府との関係を強めることは、同社の脱パソコン、さらには脱民生とも関係する。Intelにとってパソコン事業の売上額は、最近ようやく50%を切るようになってきた。Intelはデータカンパニーを目指しており、脱パソコンで見えるものはデータセンターでありクラウド需要である。さらにその先には、政府・防衛関係・公共事業が抱える社会問題の解決へと導くコンピューティングビジネスになろう。

政府と良好な関係を築いていれば短期的にもメリットがある。華為へのパソコン用CPUの輸出許可を得たことは、政府と太いパイプでつながっていることを示している。つまり、韓国のSamsungや日本のキオクシアがメモリの華為への輸出許可を米国政府に申請しているが、積極的なロビー活動でもしていない限り、すぐに許可されるかどうか全く予断を許さない。

参考資料
1. Bob Swan, “>Why manufacturing matters: Intel’s 40 years in Arizona” (2020/10/02)
2. Matt, Hamble, “Defense awards for Intel SHIP project now top $156M” (2020/10/10)

(2020/10/13)

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