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エネルギー効率アップが環境に貢献する半導体の使命−グリーンエレクトロニカ08

ドイツのミュンヘンで開かれているエレクトロニカ2008は、環境問題に半導体産業がどのように関わっていくか、景気後退を迎えている現在、どのような解がありうるか、世界の半導体メーカーのCEOが議論をするCEO Roundtableが開かれた。その席上、半導体産業の未来についてネガティブな考えは全く見られなかった。もちろん、現在は世界金融危機の影響を受け景気後退局面を迎えているものの、短期的にはすぐ回復するためネガティブに考えるCEOはいない。

エレクトロニカ2008 CEO Roundtable


このCEO Roundtableに集まったCEOは、ドイツのインフィニオンテクノロジーズ社ペーター・バウアー氏、米フリースケールセミコンダクタ社リッチ・ベアー氏、STマイクロエレクトロニクス社カルロ・ボゾッティ氏、米ナショナル・セミコンダクタ社ブライアン・ハラ氏、ドイツのオスラムオプトセミコンダクタ社のルーディガー・ミュラー氏の5人と、モデレータが元タイコ・エレクトニクス社社長のユルゲン・グレーマー氏という豪華メンバーだ。


CEO Roundtableに集まったインフィニオンのバウアー氏(左)、フリースケールのベアー氏(中央)、STマイクロのボッゾッティ氏(右)

CEO Roundtableに集まったインフィニオンのバウアー氏(左)、フリースケールのベアー氏(中央)、STマイクロのボッゾッティ氏(右)

ナショナルのハラ氏(左)、オスラムのミュラー氏(中央)、モデレータのグレーマー氏(右)

ナショナルのハラ氏(左)、オスラムのミュラー氏(中央)、モデレータのグレーマー氏(右)


地球環境に半導体産業がどう貢献するかという問題を景気後退期に来ている今、どう考えているかというモデレータのグレーマー氏の問いかけに対し、まずインフィニオンのバウアー氏が口火を切った。インフィニオンは、エネルギー効率を上げること、人々をつなげるコミュニケーション、そしてセキュリティという3つの分野の半導体製品にフォーカスし、イノベーションを進めていることを述べ、これらを使って燃費がよく排ガスの少ない自動車や消費電力の少ない製品、パワー分野での貢献などにかかわれることを強調した。景気後退は来年も続くかもしれないものの、その先には半導体製品の需要が引き続き旺盛でもっと賢いクルマや工業製品、省エネへの動きはますます高まり、来年にはその需要がもっと見えてくるだろうとした。地球規模で考えるとエネルギーの40%は電気であるからこの効率アップが大事だとして、電気の発生から輸送、消費の3つの分野のエネルギーを削減すると述べた。

比較的最近まで米インターシルのCEOを務めていたフリースケールのベアー氏は、「組み込みチップのリーダーであるフリースケールとしては」と切り出し、マイクロプロセッサの組み込みシステムを使ってこれまでの自動車、通信、工業用製品をもっと賢くすることによって燃費が少なくCO2排出も削減できるクルマを製造できると述べた。組み込みプロセッサシステムにコミュニケーション機能も連動させると、これまでとは違ってもっと効率の高いシステムを作ることができる。例えば、ファクトリオートメーションに使われているシステムはまだ効率が悪いため、さまざま企業の工場の効率を上げれば工場全体の消費電力を下げ、電力コストを削減できる。景気後退に対しては、マクロ経済は確かに悪いが、低くなった需要に対してはそれぞれ調整していきながら対処するとした。米国の次期大統領に対する期待は大きい。

STマイクロのボゾッティ氏は、力を入れている分野はパワーであり、自動車や民生、産業などの分野に応用でき、エネルギー削減に貢献できるとした。もう一つデジタル家電やワイヤレス、マルチメディアなどのコンバージョン分野でもリーダーだとしている。景気局面に対しては、悪い分野はマーケットであり金融であり、ものづくりに関係する分野は相対的には良い、特に日本は良いとした。STからみて欧州はまだましで、たとえば対ドルに対しても強いと主張した。

ナショナルのハラ氏は、昨日の記者会見でも述べたようにもっと楽観的に考えており、YouTubeやPCなどこれからも伸びる分野に力を入れていくとした。メガトレンドとしてクオリティオブライフが重要になり、ヘルスケア、再生可能なエネルギー、セキュリティに力を入れていく。オバマ次期米大統領が2500億ドルの資金を投入し、エネルギー効率の高い分野を推進していくと述べたことを引用し、ナショナルはパワーマネジメント分野のリーダーとしてエネルギー効率のアップを追及していくとした。「半導体産業は景気サイクルの波はあるもの、リアルの問題をリアルのソリューションで提供するビジネスであり、未来は明るい」と半導体産業の未来をポジティブに捉えている。

オスラムのミュラー氏は光半導体分野に注力しているオスラムとしてはLEDを使った省エネに貢献しているとした。地球規模の70億人、そのうちパソコン製品が5億台、7000万台の自動車などにLEDが使われている。地球上のすべてのエネルギーの20%は電気エネルギーであり、そのうちの19%は光に使われていることから、この分野のエネルギー効率を上げるだけでも相当なエネルギー削減になる。LEDによって照明のエネルギーを現在の30~50%を削減できる。仮に欧州全体の電気エネルギーを半分にすると、全ドイツの森が吸収するCO2の2倍の量を削減できると強調した。景気後退に関してはシーメンスファミリーの代表ではないのでコメントはしない、とした。


(2008/11/13 セミコンポータル編集室)

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