東工大が131件の特許を期限付きで無償開放開始
東京工業大学は、自らが持つ特許131件を無償で開放することを決めた(参考資料1)。新型コロナウイルス感染拡大の中で、大学が貢献できることはないか、という考えから特許の無償化に踏み切った。今の所、申し込み期間を2020年5月1日から2021年2月末までと決めているが、フレキシブルに対応したいとしている。
図1 桜の時期の東京工業大学 出典:東京工業大学ホームページ
これまで国立大学の特許は、文部科学省の元で一括管理され、共同で実用化しようとして共同研究で申請した特許でさえも企業が保有しにくかった。東工大は、2018年に指定国立大学法人となり、国が財政措置を施しながら独自に運営できるようになった。このため、東工大で開発された技術の特許の所有権は東工大が持つ。今回は、東工大の独自の判断で特許の無償化に踏み切った。
「昔と違い、共同研究は企業と大学の間での契約に任されており、一方的に大学が特許を持っていくことはしない。あくまでも話し合いで決め、契約を交わすことで共同研究ができるようになる」と東工大研究・産学連携本部副本部長産学連携企画担当の大嶋洋一教授は述べている。特許は、文科省ではなく大学側で扱うため、大学の自主性に任されているという。あくまでも企業と大学間での話し合いで共同研究を行う。
131件の公開特許では、材料関係、化学、エレクトロニクス、半導体、センサ、ストレージ、検索法など幅広い。中には株価や為替など時系列データの変化点を検出するFinTechのアルゴリズムや、骨格スケルトンを描くアルゴリズムなど、画像認識やAIで使えそうなものもある。今はやりのLiDARの特許も数件ある。機械系では、歩行支援装置や内視鏡、惑星探査車両、ロボットの関節機構、フェーズドアレイアンテナなどもある。
半導体関係では、リソグラフィの重ね合わせの影響を受けないパターン転写技術や、高速伝送線路技術、円偏波変調光ファイバ技術、テラヘルツイメージング、MRAM、マイクロプラズマ装置、低温熱CVD装置などがある。特許自体は2006年の出願のものが多い。しかし大学では先走った研究が多いため特許出願時期が早すぎ、むしろ5Gやコア基地局向けの高速デジタル光ファイバのように今、使うのに適したような特許が多い。特許は出願から20年間有効であり、時期的にはちょうどよいかもしれない。
また、企業と共同開発する場合はできるだけいろいろな企業に使ってもらいたい、と大嶋氏は考えており、1社独占にならないことを望む。それでも独占するだけの特許料を支払ってもらえるのなら、独占もやむを得ないとする。また、出来ればスタートアップ企業に使ってほしいと願っている。
今のところ、来年の2月までの申し込みを対象としているが、もっと期間延長を望む声が多ければ、延長もフレキシブルに対応したいと大嶋氏は述べる。今回、5月1日にプレスリリース(参考資料2)を発表してから、フェイスブックの「いいね!」が940件に達しているが、このニュースの関心の高さをうかがい知ることができる。
参考資料
1. 「お役に立てればプロジェクト」のお知らせ―COVID-19関連事業特許の無償開放プロジェクトのご紹介― (2020/05/01)
2. 東工大保有の131件の特許を無償開放 (2020/05/01)