Qualcomm、Audi、米バージニア州運輸局がC-V2Xを実証実験
米国のAudiと半導体のQualcomm、そしてバージニア州運輸局が共同で、2020年第3四半期にコネクテッドカーのC-V2X(cellular vehicle-to-everything)安全性を実証実験する。C- V2Xは、米国での毎年3万6000人もの交通事故死を劇的に減らす技術として期待が大きい。この実験は5Gにもつながることを意識して定められた。
図1 今回の実証実験に使うAudi 8Q SUV 出典:Audi of America
この実証実験(PoC:Proof of Concept)で行うコネクテッドカーのシステムでは、スクールバス周囲の安全性を向上させ、バイクの運転者に道路の危険個所を教えたり、道路状況や縁石などによる交通渋滞を緩和したりする。また、車内のV2Xシステムから歩行者のスマホにクルマの接近を知らせることで、米国年間6000人にものぼる歩行者の事故死を防ぐことも可能になる。
ただ、今回の実験では、二つのケースを想定している。一つは、高速道路での工事現場が前方にあることを知らせること。実験には、Qualcommの9150 C-V2Xチップセットを利用する。工事現場に作業者がいることをドライバーに警告する場合に、徐々に警告が強くなるような仕組みで車内ディスプレイに表示する。
もう一つは、幹線道路で交差点にある交通信号機から信号の位相とタイミングをQualcomm 9150 C-V2Xチップセットを介して、Audi Q8 SUVに送る。このクルマには、Audi TLI(Traffic Light Information)サービス装置を搭載しており、この装置は青信号に変わるまでの時間をカウントダウン方式で表示する(図2)。Audi Q8 SUVでは交通信号機から直接送られる信号の位相とタイミング情報のカウントダウンを微調整する。
図2 Audiのフロントパネルでは交通信号機の情報が表示される 出典:Audi of America
実験では、5.9GHz帯の短距離直接無線通信を利用する。5.9GHzの周波数帯は、FCC(連邦通信委員会)がC-V2X用に割り当てを提案したもので、5.905〜5.925GHz帯のITSバンドの20MHzの周波数帯域を使う。このC-V2Xの規格は、標準規格委員会である3GPP(Third Generation Partnership Project)のリリース14と15に準拠した仕様に基づいている。3GPPは次世代の携帯通信規格である5Gの規格も決める委員会であり、リリース16仕様に準拠すると5Gとなる。
C-V2Xは、5.9GHzのITS周波数帯で動作する今回のような直接近距離通信だけではなく、遠距離のセルラーネットワークを利用する方式にも使える。今回は、直接通信方式を用いている。
Qualcomm 9150の主な仕様は、クロック周波数最大1.7GHzのArm Cortex-A7のCPUコアを集積し、14nmプロセスで製造されている。衛星による位置情報サービスGPSやGNSS、GLONASSなどに対応している。