最新版Ericsson Mobility Reportに見る5Gの実態と予測
世界大手の通信機器メーカーのEricssonがMobility Reportを昨年11月に発行(参考資料1)、その日本語版が2019年末に完成した。これによると、5Gの加入契約数は全モバイル加入契約数80億に対して、2019年末に0.16%の1300万になりそうだとしている。2025年になっても5G加入契約数は最大ではなくLTEが最大のままだと予想する。
図1 世界のモバイル加入契約数 出典:Ericsson Mobility Report Nov. 2019
2025年の5G加入契約数は26億、と予想するが、LTEは47億程度とまだ支配的だ。LTEは2022年の54億をピークに徐々に下がっていくが、2025年時点ではまだ強い。つまり、5Gが登場してきても2020年の今でもまだLTEのピークが来ていない。5Gの本格的な普及期はこれからということになる。
モバイルの加入契約数の内訳をモバイルブロードバンドとモバイルの加入数、固定ブロードバンドの加入契約数、モバイルPCやタブレット、ルータの加入契約数の4種類に分けると、2019年にはモバイルブロードバンドが最も多い。しかも伸びも最も大きい。ただし、モバイルブロードバンドの加入契約数が最大となったのは2019年が初めてだった。つまり、モバイルの加入数は2015年から2018年までは最大だったため、ブロードバンドを導入していない携帯電話はようやくブロードバンドに取って代わったといえる。
図2 モバイル加入契約数の推移 出典:Ericsson
モバイル加入契約数の中に固定ブロードバンドが含まれているのは、ラストワンマイルをモバイルで送るためだ。欧州や米国では、電柱を立てられない地域が多く、家庭向けに光ファイバがほとんど普及していない。このため相変わらずのADSLやケーブルモデムが使われていた。住宅やオフィスの近くの小さな基地局から、ブロードバンドの電波を飛ばしラストワンマイルのブロードバンドを実現する。Verizonが世界に先駆けて28GHzのミリ波を使った5G地域はこのラストワンマイルの提供である。家庭やオフィスではアンテナで受け、室内でケーブルから端末に提供する。
5G対応の端末は、5GだけのSA(スタンドアローン)方式を中国が最初に導入すると表明していたが、中国もNSA(4Gと共存のノンスタンドアローン)方式に変えた。2019年までに導入されたモバイル端末は、全てLTEとの共存を図るNSA方式である。2020年からSA方式が導入される予定になっている。
IoTデバイスをセルラーネットワークに接続する場合に必要な、CAT-M1やNB-IoTなどのセルラーLPWA(Low Power Wide Area)規格はLTE時代から使われてきたが、5Gでも引き継がれることになる。セルラーLPWAはセルラーIoT接続全体の52%にも達すると見ている。IoTのデータレートの遅い応用では、LPWAの他に2Gや3Gの遅いネットワークを使ってきたが、これらのレガシーなネットワークは2020年くらいからほとんど飽和している。これに対して、医療や工場などのミッションクリティカルなIoTでは、高速のブロードバンドIoTネットワークが大きく伸びそうだ。ブロードバンドIoTは動画を伝送する用途に使われそうだ。
図3 セルラーIoTの接続デバイスが最も大きな伸びを示す 出典:Ericsson
IoTは、2025年には249億個に成長すると予想されている。通信距離が1km以上の広域IoTと、それ以下の近距離IoTで区分けすると、近距離IoTは2025年までCAGR(年平均成長率)13%で195億個と成長するが、広域のセルラーIoTはさらに高い24%のCAGRで成長し、54億個に達すると見ている。セルラーIoT全体は25%成長の50億個になると予想している。
参考資料
1. Ericsson Mobility Report November 2019