ON Semiが語る産業用イメージセンサの技術と市場
「CMOSイメージセンサの性能が上がってきて、要求機能や性能が産業機器市場に合ってきた」。こう述べるのはON SemiconductorのHerb Erhardt氏。CMOSイメージセンサは、これまでのスマートフォン用途から車載や産業機器向けに用途拡大が見込めるようになってきた。産業用イメージングとエッジAIの市場は14%のCAGRで増えるという予測もある。
図1 ON Semiconductor Intelligent Sensing Group, Industry Solutions, VP & General ManagerのHerb Erhardt氏
産業用イメージング技術は、クルマ用や医療機器、宇宙、マシンビジョン、セキュリティ、AR/VRなど広がりを見せている。産業用イメージセンサでトップを行くON SemiのErhardt氏は「ノイズや解像度、スピードなどの性能でコンペティタに水を開ける」という勢いで、産業機器市場のトップランナーとして語っている。宇宙市場でも、月や火星の探査機にもON Semiのカメラが使われてきたという。
高速カメラだと、信号を無視したり速度違反したりするクルマのナンバープレートを自動認識できるようになる。さらに、細かいフラットパネルディスプレイのカラーフィルタやディスプレイそのものの表示品質の検査やボンディングワイヤーの検査というマシンビジョン、さらにはデジタルX線画像、ドローンへの搭載、科学計測イメージングなども可能になる。
マシンビジョンをはじめとするイメージング技術は、AIも援護する。腐ったリンゴやバナナの画像を学習(トレーニング)によって見分けられるようになり、食品工場では瓶入りの飲み物の量や薬品ラベルのチェックなどの外観検査の自動化が可能になってきた。特に、薬品は中身とラベルの間違いや、文字が消えていることなどは許されない。また、さまざまな部品を見分け、それぞれの部品を計数したり、QRコードやバーコードを識別したりするが、それも高速に対応できるため、これからの産業用途は拡大していく。
このため、マシンビジョンとエッジAIを活用する市場は2018年の15億ドルから2022年まで年平均成長率(CAGR)14%で成長し28億ドルに達するという見通しもある。12月にパシフィコ横浜で開かれた国際画像機器展に出展した理由の一つが、産業用市場では日本企業が強く、ON Semiのカスタマが多い国だからだという。
性能・機能的には、4Kや8Kといった画素数の増大だけではない(図2)。回転している物体や細かい襞をきれいに映せるグローバルシャッタ動作、高速の流れ作業さえ分析できる120Hzの高速フレームレート、暗い場所から明るい場所、あるいはその逆でも両方とも鮮やかに見える高ダイナミックレンジ、時分割で点灯させているLEDランプをフリッカーのない状態で見える、などが開発されてきた。それも小型、低消費電力、低コストなど、絶え間ない要求もある。最高の性能を持つXGS 45000チップは、8K画像(7680×4320画素)を12ビットのカラー深度で60枚/秒(fps)の性能を持つ。
図2 産業用に必要なさまざまな要求性能 出典:ON Semiconductor
技術的には、これまでの高解像度と高速化、低ノイズ化はさらに進むだろう(図3)。また、カメラを小型化するために、画像処理チップやAIチップ、メモリ、タイミングなどの半導体ICをCMOSセンサにスタックするような積層アーキテクチャもこれから先に使われる技術だとしている。
図3 イメージセンサの進化 出典:ON Semiconductor
今後は、3次元画像として深度を測定・表示する技術にも使えるが、そのためには回折格子や位相差検出のデバイスをセンサ上に載せることになると期待する(図4)。また、微細な回折格子を利用して光の波長スペクトルを青から赤まで連続的に変えるようなファブリペローフィルタを使った分光分析が可能になると期待しており、ファブリペローフィルタやプラズモニックフィルタを開発中だとしている。
図4 深度や測距の測定から広い波長スペクトルの分析へ 出典:ON Semiconductor