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パソコン市場で生き残るため指標KEIをIntelが推進

パソコン市場がこれまで縮まってきたものの、Intelのパソコン事業(クライアントグループ)はゆっくりだが成長してきた。今年パソコン市場はようやく底を打ち回復しており、IntelはPC向けプロセッサCore iシリーズの第10世代を6月のComputex Taipeiで発表した。パソコン市場でIntelはどのようにして伸ばそうとしているのか。

ここ4〜5年、パソコンの世界市場は少しずつ縮んできた。2019年になってようやく底を打ち回復の見込みが出てきた。この間、パソコン向けCPUをリードしてきたIntelも市場と共に縮んで来たか。実は否だ。落ち込みが激しいデクストップ市場を避け、モバイルパソコン市場へ切り替えることによって、パソコン用CPUで成長してきた。もちろん、パソコンからサーバやデータセンターなどのクラウド市場や、IoTのゲートウェイ、AIなど新しいコンピューティングの分野へと製品ポートフォリオを広げてきた。とはいえ、Intelにとって売上額の最大の分野は未だにパソコン市場である。


図1 Intelの打ち出したKEI指標

図1 Intelの打ち出したKEI指標


どうやって、Intelのパソコンビジネスはこの先も成長しようとしているのか。その答えをKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)ならぬKEI(Key Experience Indicator:重要体験指標)で見ることができる(図1)。KEIはユーザーとのディスカッションの中から設定したもので、特にモバイルユーザーの使い方が変わってきたことをベースにしている、とインテル技術本部部長、安生健一朗氏は述べている。

IntelのCPUは、3つのKEIを持つ。一つは瞬時の起動であり、スリープ状態から1秒以内に復帰することを目指す。次に、電源を外した状態でも応答性が優れていること。一般のパソコンでは電源を外してバッテリだけで駆動する場合にはクロック周波数を落とし消費電力を減らす設計をしてきた。3番目は、十分なバッテリ駆動時間を持つことである。これは、パソコンに保存された動画を16時間以上再生できるか、Wi-Fiにつなげてウェブブラウジングで9時間以上見られるかを目標としており、その反面バッテリは4時間分の容量を30分以内に充電できることとしている。この3つを2019年の指標KEIとしてCPU(最近ではSoCという言い方をしている)に織り込む。

これらの指標を実現するため、性能を維持しながらパソコンの消費電力を下げるために極めて細かい電圧制御を行っている。消費電力は、電源電圧を下げる効果が大きいので、電圧を10mVあるいは20mVという非常に細かい電圧で制御している。加えて、AIを使ったダイナミックチューニングによってさらに細やかに自動的に電圧を変えている。これまでの電圧チューニングの経験値を学習させ、どのような場合に変化させるか、という学習データを蓄えておき、その状況に近づいたら、電圧をダイナミックに変えるという機能である。

スリープ状態から素早く立ち上がる場合でも、学習の経験値からスリープ状態の長さや時刻などのデータから予め電流値を少しだけ上げておくという方法や、起動に必要な回路だけ電流を少し上げておく、といった方法が使われる。ここでもAIで状況を学習させておけば、無駄な回路の電流は抑えたまま、立ち上がり時間を短くできる。

Intelは、記者会見でもCPUと言ったり、SoCと言ったりしている。CPUはもはや従来のALUとメモリを使った単純のプロセッサではなく、GPU(グラフィックス回路)やISP(画像処理プロセッサ)なども集積するようになっている。加えてAI機能も搭載する場合には、CPUで実行せず専用のAIプロセッサを集積する方がCPUの負荷を減らし消費電力を減らすことができる。今のところAIエンジンはCPUに集積する方向だという。

また、Intelの新型メモリOptaneはストレージデバイスのキャッシュメモリとして使う。HDDストレージではOptaneメモリM10を、SSDストレージではH10を使うことで、ストレージデバイスを高速に働かせることができる。SSDでは、TLC(3ビット/セル)やQLC(4ビット/セル)などで大容量を実現するが、アクセス速度は遅いため、よく使うメモリ内容を予めキャッシュに移行させておくことで高速化を図る。


図2 プロジェクトアテネに参加している企業群

図2 プロジェクトアテネに参加している企業群


Intelはユーザーの意向をくみ取るために、プロジェクトアテネというプログラムを推進しており、エコシステムの構築と、共同開発、認証システムなどを実行する。すでに海外を中心に100社以上がこのエコシステムに参加しており(図2)、日本メーカーとも継続的に話を進めている。図2をみても中国や台湾、米国などの企業が多く、日本企業の動きが遅いことを表している。

(2019/09/26)
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