KDDI、5G通信対応のIoTソリューションを提案、20年3月から提供開始
KDDIは、5G通信対応のIoTソリューションを提供する、と発表した。これは、4K映像をカメラで撮影、顔認識や物体認識などAIソリューションを提供するサービスである。映像を分析するAIカメラ、デジタルサイネージを活用するインテリジェントディスプレイ、ジェスチャー入力可能な3Dホログラムの3つをまず用意する。
図1 5Gを使ったIoTサービスを推進するKDDI
KDDIは、2017年にIoTサービスと接続ソリューションを提供するソラコムを買収して以来、IoTソリューションの提供を加速してきた。3G/4Gの通信ネットワークでIoTセンサからクラウドへ上げるまでだけではなく、用途ごとのソリューションもワンストップで提供している。5Gネットワークへの展開も容易であり、2020年から4GとミックスのNSA(Non-Stand Alone)方式から参入し、2022年以降のSA方式へと切り替えていく(図1)。2020年には4Kなどの高精細カメラを利用する応用も展開できるようになり、今回、映像×5Gという提案を行った。
加えて5Gを機に、これまでのような回線を敷くだけのいわゆる「ドカン屋」ではなく、5Gネットワーク上でコンテンツも提供する。さらに、ハードウエアとしてのカメラを提供するだけではなく、アプリケーションソフトを開発するためのPaaS(Platform as a Service)としてのサービスも提供し、いわば5G向けのハードやソフトを購入した後も、データ分析とその提供によって顧客を満足させるようなサービスへとつなげていく。
今回提供する具体的なサービスとして、AIカメラがある。これは通常のカメラと画像解析エンジンによるソリューションである。想定シーンとして例えば、店頭に設置したカメラで人物を撮影し、ゲートウェイを通して画像を解析しユーザー(店舗)にフィードバックする。どのような客層(年齢や性別など)がどのような買い物をしたのか、どのくらい滞在したのか、店舗全体の分布図を可視化する、など必要な情報を見ることができる(図2)。
図2 5Gだと4K画像を転送するため、人物を解析できるが、4GはVGAに解像度を落として限られた時間で転送しようとすると解析できない
5Gのデータレートだと、4Gと違い顔を鮮明に映し出すことができるため、認識しやすい。4GでしかもVGA画像で比較したところ、捉えた「男性、38」の文字が「不明」と映し出していた。顔認証以外の事例として鉄道の駅では、乗客の転落や踏切への侵入を検出したり、混雑状況を把握したりする。
AIによる分析ではクラウドを利用するため、ユーザーはサーバーを用意し運用する必要がない。もちろんハードとソフトの更新も不要だ。ソフトウエアの更新にはOTA(Over the Air)を利用する。設備の設置スペースを心配する必要もない。サービス当初は、大手のパブリッククラウドを利用するが、いずれKDDIが運用するパブリッククラウドへと移行するとしている。
もう一つのサービスはインテリジェントディスプレイである。ここでは安価で一般的なウェブカメラを使ってデジタルサイネージとして使う利用シーンがある。例えば、カメラがとらえた人物の性別と年齢を推定したあと、その人が好むと推定されるコンテンツをインテリジェントディスプレイに流すのである。スーパーマーケットでは、その世代の好む食べ物の販売状況を流したり、割引情報を流したりする。
3つ目のサービスとして、3Dホログラム像を提供する。これは例えば美術館や博物館などを想定し、展示物を触ることなく、手のジェスチャーで例えば、壷をつかんで回したり、底を見るようなしぐさで、壷の後ろや底面を見ることができる(図3)。
図3 手のジェスチャーによって3Dホログラム像の裏面を見る
これら提案されたソリューションの価格は、サブスクリプションベースの月額料金となり、初期費用を抑えることができるようにする。2020年3月のビジネススタート時には5Gの利用料金を示せるようにしたいとしている。今のところ想定産業として、交通や物流を主体に狙っていく。