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もう一つのメガトレンド;自動化から自律化へ、Wind Riverの戦略

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RTOS(リアルタイムOS)やLinuxベースの組み込みOSをコアビジネスとするWind Riverは、自動化から自律化へというメガトレンドを紹介した。自動化はコンピュータプログラムによって作業手順通りに動かすことで、自分では判断しない。これに対して自律化は自ら判断して動く。産業・医療・クルマ・宇宙航空などの分野から自律化は進む。

図1 ウィンドリバー日本法人の社長、Michael Krutz氏

図1 ウィンドリバー日本法人の社長、Michael Krutz氏


Wind Riverは、産業・医療・クルマ・宇宙航空など極めて重要なインフラ向けのエッジコンピューティングをもっと賢くすることをゴールとしている。同社日本法人の社長であるMichael Krutz氏(図1)は、「現在の自律化は始まったばかりでまだ十分ではない。自動運転車が事故を起こし、工場のロボットによる死亡事故もある。陸軍のドローンの墜落、外科手術の失敗による死亡例などもある。もっと賢くする必要がある」と語る。まだ不十分だが、今後完全な自律化になれば人間のミスをなくすことができ、無人化が可能になる。

自律化は産業やビジネスの分野だけにメリットがある訳ではない。政府系の業務でもメリットはある。日本政府が提唱する社会への自律化は、テクノロジーを活用し、市民にとってもっと良い社会、もっと良い交通、もっと良い医療、もっと良い監視・セキュアなシステムへとつながって行くとKrutz氏は言う。このテクノロジーとしてIoTやAI、ビッグデータ、5Gなどを駆使、生産性や生活を向上させる。そして、さまざまなテクノロジーのパズルをうまく組み合わせることで、実現するという。特に自律化には、4つのカギとなるピースがある(図2)。5G、エッジコンピューティング、AI/機械学習、仮想化である。


自律型システムの必須要素

図2 自律化を実現する4つのピース 出典:Wind River


5Gは、これまでの3Gとは全く違う技術だとKrutz氏は見る。4Gは確かに3Gの延長にすぎなかったが、5Gは広いバンド幅と短いレイテンシによって決定的に性能が違う。加えてネットワークスライシングによって、パブリックネットワークの中にプライベートネットワークを構成できるということも5Gの強みとなる。

またエッジコンピューティングは、現場近くにインテリジェンスをもたらすため、データを分析し、素早い意思決定ができるようになる。

Wind RiverはAI企業ではないが、製品のいくつかではAI/機械学習アルゴリズムが必要となる。このため同社はAI/機械学習のフレームワークを提供するという。自律化システムでは、決定する前の段階において自分で最適化し、自分で治すことで問題を解決しシステムを最適化する。この結果、分析能力の向上が図れるとしている。

仮想化は、今のデータセンターが行っている手法であるが、1台のハードウエアプラットフォームを複数に分けて、それぞれ別のコンピュータが動作しているように見せかける技術のことである。ソフトウエアも含めて、アプリケーションやミドルウエア、OS、ハードウエアを1台のプラットフォーム内で分ける。仮想化のメリットは、ハードウエアを変えることなく、リモートで仮想マシンの機能を追加するなどアップグレードが可能になることだとしている。

全てのWind River製品は、従来と変わらない4つの要求を満足するという。すなわち、セキュリティ、安全性、信頼性、認証対応の4つは同社製品にとってマストである。これらの4つは将来に渡っても変わらない。

レガシーシステムから今後の将来のシステムへの間には大きなギャップがある。レガシーなシステムでは、特殊用途向けであり、それだけで閉じており、他から分離されており、メンテナンスが必要で、コンポーネントごとに承認が必要、という問題があった。将来のシステムは、オープンで安全、セキュアで、つながっており、インテリジェントで、ソフトウエアを定義し高い柔軟性があり、システムとして認証を取得する。Wind Riverはレガシーシステムと将来のシステムとのギャップを埋める製品を提供するとしている。


製品ポートフォリオ

図3 Wind Riverの製品群 出典:Wind River


Wind Riverは、RTOSのVxWorksやLinuxに加え、仮想化のプラットフォームHELIX、クラウドプラットフォームのTitanium、その他デバッグやコンパイラ、シミュレータなどの開発ツールもある。これらの製品を生かして自律化を支援していく。

(2019/08/01)

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