ローカル5Gへのスムーズな移行が始まりつつあるローカルLTEの実例集
第5世代携帯通信サービスである5Gで、企業や工場内で使える「ローカル5G」が最近注目されている。実はローカルなネットワークは5Gが初めてではない。LTEから始まっている。EricssonはローカルLTEの事例をこのほど明らかにした。ローカル5Gへのスムーズな移行も始まりつつある。
図1 ローカルLTEの実例オランダ編〜ロッテルダムの港湾の積み荷のロジスティックに活用 出典:Ericsson
Ericssonは、6月にエリクソンモビリティレポートを発行したが、このほどその日本語版を発行、その中でローカル5Gは、ローカルLTEからスムーズに移行できることを明らかにした。ローカルLTEの実例も発表、オランダ、米国、カナダ、オーストラリア、ドイツの企業での事例を紹介している。この中からオランダの港湾の積荷下ろし作業と、カナダの金鉱山、ドイツの電気自動車生産工場で使われた事例を紹介する。
オランダのロッテルダムの港湾で船の積み荷をトラックの待つ集積場へ運ぶ作業で、ローカルLTEが使われている(図1)。Rotterdam World Gateway社は、自動搬送機を使って船のコンテナを集積場まで運ぶ作業の通信に従来はWi-Fiを使ってきた。広大な港でWi-Fiのアクセスポイントを47カ所設けていたが、ローカルLTEに移行することで、基地局は2ヵ所で済んだ。これはRWG社が3.5GHz帯のLTEバンドのライセンスを得ることで実現した。
図2 ローカルLTEの実例カナダ編〜ケベック州の金鉱でIoTやデータ、音声の通信に活用 出典:Ericsson
地下の鉱山での作業現場にもLTEは入り込んでいる。カナダのAmbra Solutions社はEricsson社と共同で、Agnico Eagle Mines社の持つ金鉱山にローカルLTEネットワークを構築した。これまでで最も深い3km地下に850MHz帯のLTEネットワークにデータや音声、IoTなどを載せていく。トンネルや地下では電波が届きやすいサブギガ帯である850GHz帯のLTEは最大6kmまで電波が届くという。この坑道の通信ネットワークをもしWi-Fiで構成するなら60台のアクセスポイントが必要になると見積もっている。
Ericssonは、Agnico Eagleの鉱山に無線システムとソフトウエアを提供した。この無線システムは、ソフトウエアで更新できる無線システムであり、今後5G NR(New Radio)仕様もサポートしていくという。Ericssonはソフトウエアにも力を入れており、5GにアップグレードできるソフトウエアやIoT専用のNB-IoTもソフトウエアを変えるだけで既存のLTE基地局でIoTもカバーできるようにしている。
ローカルLTEの有望な応用の一つが工場での応用である。その中でも小型の電気自動車EVメーカーのドイツe.GO Mobile社のアーヘン工場は、ローカル5Gネットワークを構築する最初の工場になりそうだ(図3)。LTEはすでに設置されており、RFIDを使って生産ライン上のクルマの位置や、フォークリフトのパレットの有無などを把握する。8500平方メートルの工場内に36台のアンテナを設置している。
図3 ローカルLTEの実例ドイツ編〜EVの生産に5Gを使う最初の工場になる 出典:Ericsson
Ericssonはさらに5G Platformを使って5G無線ドットと呼ぶ小さな基地局を2019年8月末までに設置し、ローカル5Gのサービスを開始する。最高データ速度2Gbpsで、数msのレイテンシでデータを送受信する。これにより生産性の向上、生産速度、セキュリティ向上などを実現する。スマートファクトリそのものとなりそうだ。