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オランダが国を挙げてサイバーセキュリティを強化

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オランダが国を挙げて、サイバーセキュリティを高める試みを行っている。政府レベルでサイバーセキュリティ委員会(CSC)という諮問組織が設置され、CSCと具体的なパートナーシップを結ぶとHSD(ハーグセキュリティデルタ)の会員となり、エコシステムに参加できる。このほど在日大使館が中心となって、日本企業や大学などの会員拡大に向けたセミナーを開催した。

HSDは2013年7月に設立、オランダ国内外280もの企業や研究機関、大学と公式パートナーシップを結び、エコシステムを構築している。オランダには国策会社だったフィリップス社の伝統があり、オランダは新しい技術であるサイバーセキュリティに今、力を注ごうとしている。HSDの創設に続き、2014年10月にはウィレム・アレキサンダー国王がマキシマ王妃と共に来日、サイバーセキュリティで日本とパートナーを組むことを提案した。1年後にはマルク・ルッテ首相が来日、これから日本企業がパートナーシップを結び、HSDに参加するようになった。今回は、オランダ王国大使館が中心となってセキュリティセミナーを開催した。

サイバーセキュリティ問題は日本ではさほど関心が高くない。安心・安全はタダで手に入ると思っている風潮が強いからだ。電子回路の保護回路用半導体や部品にコストをかけたくないと思う企業が多いことと似ている。外国では、万が一のリスクに対してかけるコストと、万が一の事態になってしまった時のコストを比較して、リスクに備える方が得策、と考える傾向が強い。サイバーセキュリティで日本における最大の問題は、リスクの可能性を否定したり先送りしたりする傾向が強いことだ。

だからこそ、ソフトウエアだけではなく、ハードウエア上でも秘匿性の高い情報に関してはセキュリティをしっかりしておく。基本的には、ソフトウエア上でIDとパスワードで対応し、あらかじめ登録した者だけが入れるような認証制度などを実装する。これらだけではなく、万が一侵入されてデータを取られても暗号をかけておき、読めなくし、その解読キーを認証が必要なコンテナに保存しておく、といった方策も必要となる。もちろん、セキュアにすることはカギを何重にもかけることと等しいため、使いにくい。このため、セキュアにする情報としない情報をしっかりと区別するような判断基準を持つ必要がある。

HSDに属しているセキュリティ企業には、ソフトウエア、ハードウエア、いずれの企業も存在する。HSDはまるで、セキュリティのシリコンバレーともいうような組織に近い。シリコンバレーのようにいろいろな企業のエンジニアなどが集まり、自由にディスカッションする。HSDの会員企業の例として、Compumatica社は、7層ものファイヤーウォールを築き、認証されたデータのみを通しそれ以外を完全にブロックするCompuWall技術や、ファイヤーウォールにやってくるデータのネットワークを分離し1方向しか受け付けないMagiCtwin技術、データを送るとき量子レベルの堅固な暗号をかけるCryptoGuard VPN、などを持つセキュリティの専門家企業である。日本の電力網の代表企業である東京電力とパートナーシップを結び、発電所や変電所など1500ヵ所に導入しているという。

その他、工場や現場(OT)のセキュリティに強いForescout社、ネットワークにつながる全てのデバイスに対して不審な挙動や接続情報を検出するThreat Intelligence技術を特長とするBitdefender社、AIや機械学習を使って未知の脅威を検出し、その挙動を追跡、可視化し、攻撃者を取り除くエンドポイント検出技術ReaQta-Hiveを開発したReaQta社(リアクタと発音)などがHSDのメンバーであり、今回のセミナーで紹介された。

HSDのメンバーには、デルフト工科大学(Delft University of Technology)やアイントホーフェン工科大学(Eindhoven University of Technology)なども参加しているが、その理由はサイバーセキュリティに強い人材を供給するためである。その逆に、サイバーセキュリティを教える教員も不足しているため、HSDから最新情報を提供し、教員養成にも利用する。

(2019/05/22)

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