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水中通信に青色LEDやレーザーが浮上、LiDARで海底地形を自動計測に

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青色光を使った通信が水中で意外と使えそうだ。水中の光通信は消費電力とデータレート次第で1〜100メートルも飛ばせるらしい。こういった発想から生まれたALANコンソーシアムが2018年6月に設立されたが、会員企業のトリマティス社がこのほど水中LiDARの開発を始めた。

これまで海中での通信手段としては超音波(ソナー)くらいしかなかった。電磁波は水中で吸収されるからだ。また超音波は通信の周波数帯域が狭く、伝送容量が小さい、また遅延が大きく即時性が難しい、などの問題があった。海洋研究開発機構の研究では900mの距離を80kbpsで通信できた程度に留まっていた。

そこで、超音波ではなく光を使う通信を検討してみると、水中では青色が最も良く通るため、青色LEDを通信に使ってみようとして、このコンソーシアムが立ち上がった。深海なら300m、浅い海でも120mまでは届くことを実証しているという。

ALAN(Aqua Local Area Network)コンソーシアムには、海洋開発を狙って海洋研究開発機構に加え、産業技術総合研究所や情報通信研究機構、KDDI総合研究所、ベンチャーのトリマティス、さらに千葉工業大学や東海大学、東京工業大学、東北大学、名城大学、山梨大学、早稲田大学も加わる。これらの創立メンバーに加え、設立後に太陽誘電や浜松ホトニクス、電気興業、モバイルテクノなども参加した。


ALANコンソーシアムが目指す3年後のイメージ

図1 青色LEDやレーザーを利用する海中通信の用途 出典:ALANコンソーシアム


海中での応用(図1)としては、水中LiDARが最初の応用となる。これは海底の地形計測や、橋脚や港湾設備の水中部分の検査、ダム点検、地震や津波後の調査、海中の浮揚物となるプラスチックごみの検出、などの調査に使われそうだ。また、海中・海底の様子をリアルタイムでカメラの映像伝送という応用もありそうだ。海底の撮影に高精細カメラを使うならデータ量は多くなるため、光によるワイヤレス通信なら伝送できそうだ。

今回、トリマティス社が開発する水中LiDARは、実は2号機に当たる。1号機(図2)はROV(Remotely Operated Vehicle)の上にLiDARを設置している。このLiDARは、光を直線的に反射して反射する光を受けていただけにすぎず、地形を描くためには機械的に動かしながら走査しなければならなかった。今回試作する2号機は、光ビームを振るスキャナー機構を搭載する。年内に海中ロボットも含め、LiDARの実証実験を行う予定で、19年度〜21年度に渡り開発を進め、この3年間で実用化のメドを付けていく、とトリマティス社代表取締役社長の島田雄史氏は意欲的に語る。


図2 試作したROV-LiDARの1号機 出典:トリマティス

図2 試作したROV-LiDARの1号機 出典:トリマティス


市場としては、まず社会インフラである河川や港湾などの橋脚の保守検査を想定しており、日本国内には、橋脚は今後10年以内に建築後50年以上経過するものがあるため、膨大な市場になりうる。さらに水中ロボットを組み合わせることで、なり手が少なくなってきているダイバーの代わりを務めることの支援にも期待している。

(2019/03/14)

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