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パナソニックはティア1サプライヤを狙う

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クルマ分野では、「パナソニックはもうティア1サプライヤです」とパナソニック(株)オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社オートモーティブ開発本部副本部長兼総合ソリューション開発センター所長の塩月八重三氏(図1)は胸を張る。1月のCESで展示したクルマ向けプラットフォームとなる技術をこのほど公開した。

図1 パナソニックのオートモーティブ開発本部副本部長の塩月八重三氏


同社はこれまで培ってきたテレビの電源基板やIH調理器具、電動コンプレッサ、リチウムイオン電池などの技術を車載制御に生かし、48V系の電動のパワートレインプラットフォームと呼ぶIPU(Integrated Power Unit)を開発した(図2)。IPUは、小型の電気自動車向け駆動部分を統合化したユニットで、充電器とDC-DCコンバータ、モータ駆動のインバータ、モータを一体化した電動の「エンジン」である。2輪車にはIPU1個で車輪を駆動し、超小型4輪車の2輪駆動にはIPU1個とMTU(インバータとモータのみを統合化したもの)1個で駆動する。小型4輪駆動車には、1個のIPUと3個のMTUで駆動する。車輪ごとにモータを組み込むインホイールモータ方式にも使えるとみている。


電動化の取り組み 民生エレクトロニクスで培った技術を車載に適用、2輪から4輪EVまでカバーできる電動パワートレインプラットフォームを開発

図2 電気自動車向けのパワートレインプラットフォーム


このプラットフォームは、回生ブレーキを利用するマイルドハイブリッド用ではなく、あくまでも小型電気自動車(EV)向けのモータと駆動装置だとしている。これまでのEVはバッテリを直並列に接続し、300〜350Vの直流電源を利用していた。同じ電力なら高電圧の方が配線は細くて済むからだ。つまり軽量化だ。また、これまでの48V系の駆動システムはEVではなく回生ブレーキを活用するマイルドハイブリッドとして欧州を中心に普及させてきた。

これに対し、パナソニックが狙うのはあくまでも小型車であり、普通車以上は考えていない。このIPUは回生ブレーキシステムに使う充電器を搭載しており、DC-DCコンバータは48Vから12Vへ変換する。ワイパーやパワーウィンドウのようなちょっとしたモータ駆動や電気系統には、12V系のシステムを使っているからだ。IPU1個の電力密度は0.8kW/lとこれまでのものより4倍高いとする。モータやインバータ、電源関係を一体化したことで軽量・小型化し、インバータを高精度にデジタル制御し、磁気飽和させないように制御したことで効率が上がったとしている。

コックピットのコンセプトモデル

パナソニックは、車載の駆動部分だけではなく、インフォテイメント向けのコックピットを備えた未来の自動運転車のコンセプトデザインも展示した。これまでのディスプレイ技術を生かして液晶パネルに加え、有機EL、マイクロLEDなど新しいディスプレイもクルマに搭載した。

一つはADAS レベル2を想定したもの。液晶パネルを4枚と、フロントガラスに投射するHUD(Head Up Display)1枚を持つ、5枚のディスプレイパネルのシステム(図3)である。
図3のシステムでは、左ハンドルの運転手の真ん前が凹状に湾曲したディスプレイであり、その隣の真ん中のディスプレイがやや凸状に出っ張った曲面を持つ。右側のディスプレイはほぼ平面、となっている。操作は全てタッチスクリーンとして使える。特に横に並んだ3つのスクリーンは互いにシームレスに連携しており、スクリーンを右へスワイプすると右のスクリーンに画像は右へシフトする。その逆もでき、シームレスに画像を左から右へ、あるいは右から左へ、とシフトできる。


図3 液晶パネル4枚とHUD1台の計5台のディスプレイを搭載


ディスプレイをぜいたくに使用

さらに将来の完全自動運転(レベル4ないし5)を想定すると、ディスプレイの数も面積も増えるだろう、という利用シーンを紹介した。完全自動運転では、4人が向かい合い窓に半透明の有機ELディスプレイを設置し、それを情報表示や外光を遮断するカーテンなどに利用する(図4)。また天井には有機ELパネルを設置し情報スクリーンとして利用する。例えば、4人が座っている椅子の表面温度を天井にサーモグラフィを映すことができる。これにより、各椅子から各人ごとに温度の違う空気が椅子に配置したエアコンから空気が出てくる。


図4 完全自動運転を想定した利用シーン 有機ELディスプレイを横と天井に設置、情報を映し出したりカーテンに使ったりする(写真左) また木目状のボディにはマイクロLEDを組み込んでおり簡単な情報を表示する(写真右)


さらに図4右に示すように、木目状のインテリアボディにも組み込んでおり、マイクロLEDディスプレイを薄い木目に埋め込んでおき、それも情報表示に使う。写真にはないが、椅子のひじ掛け部分のボディにもマイクロLEDディスプレイでスライダを表示し、タッチしながらスライダを動かし表示された情報を操作できるようになっている。

パナソニックの自動運転車の利用シーンは、ディスプレイをふんだんに使ったものが多い。液晶、有機EL、マイクロLED、とさまざまなディスプレイを示すことで、パナソニックらしい未来の自動運転車を訴求している。これまでクルマ分野と言いながらバッテリしか公開してこなかったパナソニックだが、クルマへの参入は本気のようだ。

(2018/04/03)

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