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解雇のないDigi-Key、ハードとソフトに投資、業務改革でライバルに差

エレクトロニクスエンジニアが製品開発で欠かせない電子部品や半導体製品をワンストップで入手できるディストリビュータのDigi-Keyが日本国内でも存在感を高めている。日本での売り上げは2016年に21%成長し、Digi-Key Japanの月間ページビューは350万、ビジター数は18万8000を超えた。Digi-Keyのデジタルビジネス部門VPのJim Ricciardelli氏が来日、日本戦略を聞いた。

図1 Digi-Keyのデジタルビジネス部門VPのJim Ricciardelli氏

図1 Digi-Keyのデジタルビジネス部門VPのJim Ricciardelli氏


Digi-Keyの本社は、米国ミネソタ州の小さな村、シーフリバーフォールズ(Thief River Falls)にある。人口8500人の村の3400名がなんとDigi-Keyで働いている。この本社から、日本を含むアジアへ72時間以内、欧州へは48時間以内に配送する。米国から世界中へ電子部品や半導体を届けるために、81カ国/10言語のウェブサイトを構築しウェブからの申し込みに対して即座に製品を送り出す。受注したその日に巨大な倉庫から取り出し出荷する。注文を受け、部品を取り梱包して出荷するまで平均20分しかかからないという。実際に配送した国は170カ国を超える。

Digi-keyの特長は、豊富な在庫だ。2016年現在、650社以上のサプライヤーの製品130万4000点の部品を揃えている。この部品数は注文があれば、いつでも即座に出荷できるという意味だ。加えて、570万点以上の部品には、www.digikey.jpからアクセスできる。調査会社AspenCoreの2016年4月の調査では(図2)、今すぐ入手可能な部品を得られるディストリビュータはどこかという質問に対して、51%がDigi-Keyを1番と答えている。


図2 調査会社AspenCoreによるアクセスしやすいディストリビュータ 調査は2016年4<br />
月に実施 出典:Digi-Key<br />

図2 調査会社AspenCoreによるアクセスしやすいディストリビュータ 調査は2016年4
月に実施 出典:Digi-Key


同社はさらに扱う製品を増強するため倉庫設備の拡張を計画している。2013年に拡張した80万平方フィート(7万4400平方メートル)から、さらに9万3000平方メートル(東京ドーム2個分)の倉庫に拡張した(図3)。さらに2021年までにこの2倍に拡張する計画で、投資金額は2〜3億ドル。この拡張によって1000名強の新規社員を採用する。


図3 倉庫を東京ドーム2個分の広さまで拡張した 出典:Digi-Key

図3 倉庫を東京ドーム2個分の広さまで拡張した 出典:Digi-Key


2番目の特長は、サービスだという。欧州・アジアに販売拠点やコールセンターを置き、地域ごとにエンジニアからの問い合わせに対応する。時間のかかる税関審査を含め、注文をウェブなどで受けてから欧州には48時間以内、アジアには72時間以内に届ける。倉庫にはUPS(日本ではヤマト運輸がリレーする)などの国際物流業者専用の搬入口を設け、彼らが商品を受け取った後、最も近い空港へ送り、その空港からミネアポリスなどの国際空港を経て世界各地に送り出す。

毎日送り出す梱包数は1万8000点以上、新製品もサポートし、130万点の部品を常時ストックしている。グローバルにサポートし、ローカルの言語や通貨に対応する。毎日3000を超える電話による問い合わせにも4秒以内の答えることをモットーとしている。

3つ目の特長は、デジタル技術を駆使したサービスだ。ウェブを充実させ、部品を探しやすくしている。年間のページビューは8656万、ビジット数813万、である。ウェッブトラフィック数の多さ(マーケットシェア)では、Digi-Keyが39.1%のトップ、2位はMouserの27.1%、3位は11.9%のElement 14、以下10%以下の企業が続いている。

Digi-Keyは、よく使う顧客が注文する場合に、少ないステップで見積書、請求書までも簡単に得られるようにAPIソリューションも提供している。ITの知識を備えたユーザーが自分で発注プロセスを設定すると、ソフトウエアロボットが自動的に価格や在庫状況を取ってきて表示する。また、Digi-Keyとしても世界中から一度に大量の注文が入った場合でも、ロボットが見積書を各地に自動的に発行する。こういった仕組みをDigi-KeyはM2M(machine to machine)デジタルコネクションと呼んでいるが、業務改革で今注目されているRPA(Robotic Process Automation)システムそのもので、ジャストインタイムで顧客は注文から支払いまで短時間でできる。Digi-Keyにとっても見積書・請求書の作業に人を張り付けておく必要がない。

Digi-Keyの企業文化はかつての日本とよく似ている。極めて家族的であり、ある社員は親戚が40人もDigi-Keyで働いているという。「社員は誇りをもって仕事をしながらも謙虚で、会社への忠誠心が強く、みんな一生懸命に働いている」とRicciardelli氏は言う。「エレクトロニクス産業はこれまでも好不況の波が常にやってくるが、会社としてはこれまで一人も解雇したことがない」、と同氏は自慢する。

日本では、1976年にパナソニック(旧松下電子部品)との関係で技術サポート体制ができており、2002年には日本語のウェブサイトを作り、日本のエンジニアの要求にも対応している。この結果、日本での売り上げは昨年21%成長した。ウェブトラフィックによるマーケットシェアは2017年1〜8月の期間で、1位のRS Componentsが32.7%で、2位マルツエレックの25.9%に続く、第3位の18.1%を得ている。

(2017/09/29)
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