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半導体の成長は止まると見誤った理由

7月19日に、セミコンポータルでは、チュートリアルセミナー「市場・統計データの見方」を開催した。ここでは、統計データの数字が同じでも、見せ方によっては成長産業と見えなくなることを議論した。10年前、「半導体はもう成長産業ではない」と語る人たちがいた。半導体産業から離れていった企業もあったが、再び戻ってきた。

図1 WSTSの数字を対数グラフで表現

図1 WSTSの数字を対数グラフで表現


図1は、WSTS(世界半導体市場統計)の数字を拾って片対数グラフに描いた図である。10年ほど前はこれを見て、半導体はもはや成長産業ではなくなった、と述べた官僚やアナリスト、ジャーナリストたちがいた。確かに、1995年前後までは年率20%という驚異的な伸びで市場が成長していた。それが1995年から現在までは5〜6%に落ちてきた。だから「半導体はもはや成長産業ではない」と誤った結論を導いてしまった。

しかし、全く同じ数字を対数ではなく、ノーマル座標(デカルト座標)でグラフ化すると図2のようになる。半導体産業は1995年あたりから直線的に成長している。数字の出どころはWSTSが発表している数字一つであって、同じ数字を対数でプロットしたのが図1であり、ノーマル座標でプロットしたのが図2である。


図2 WSTSの数字をノーマルグラフで表現

図2 WSTSの数字をノーマルグラフで表現


ではなぜ、図2は成長しているように見え、図1は成長が止まったように見えるのか。それは、年成長率をパーセントで表すか、いくら増えたかという前年との差分で表すかの違いである。年成長率は、銀行利息の複利計算のように等比数列として毎年増えていく。リニアな伸びよりも急カーブで伸びるためハイパーリニアという。これに対して前年差でとれば、等差数列のように増えていく。どちらも成長していくのではあるが、等差数列では、その成長率は毎年下がっていくのである。

具体例を挙げよう。毎年20%ずつ成長するなら、初年度10の場合(単位は10万ドルでも10億円でもいい)で進めていくと、次のようになる;初年度から10年目まで、
10、12、14.4、17.28、20.74、24.88、29.86、35.83、43.00、51.60
これが等比数列である。これに対して等差数列的に、初年度10の数字が5ずつ成長するなら次のようになる;
10、15、20、25、30、35、40、45、50、55

2年目は50%成長(15/10)だが、3年目は33.3%成長(20/15)、4年目は25%成長、5年目は20%成長、6年目は16.7%成長、7年目は14.2%成長、8年目は12.5%成長、9年目は11.1%成長、10年目は10%成長となる。すなわち、等差数列的に成長するなら、成長率は毎年下がっていく。しかし、着実に5ずつ成長しているのである。

半導体産業は、図2のように等差数列的に成長しているのであり、決して飽和していない。図1で読み取れることは、半導体産業は95年ごろまで毎年20%で成長し、それ以降は等差数列的に成長してきている、ということである。つまり、今は半導体ブームと言ってもてはやしているが、半導体は決してブームではなく、着実に成長している産業であるというべきなのだ。

この20%成長とはどのような意味か。米国のシリコンバレーを研究しているStanford大学の研究員、櫛田健児氏によると、ムーアの法則に沿った成長率を1971年のフォルクスワーゲンのモデルに例えると、今は最高時速4828km/時、燃費300万km/ガロン(1ガロンは約3.8リットル)、価格は4セントというとんでもない数字になっているという。要は驚異的な伸びだったということだ。

半導体は、1995年ごろまで20%という驚異的なスピードで成長し続け、それ以降も上がり下がりを繰り返しながらも着実に成長している産業である。ムーアの法則による集積度の向上が2次元のシリコンチップ上でたとえ止まったとしても、成長し続ける。原子の大きさという物理限界の2次元が限界にくるなら3次元方向に伸ばせばよいからだ。3次元の方が安くなれば、3次元へ進むことは明白で、NANDフラッシュメモリはすでに3次元化で製品化している。

加えて、半導体製品は、単なる電子回路を詰め込んだハードウエアではなく、ソフトウエアを組み込み活かすハードウエアに変身した。CPUというコンピュータシステムが、組み込みシステムと名を変えて、あらゆる分野に入り込むようになった。ソフトウエアは人間の知恵であり、知恵は無限に生まれてくるアイデアである。だからこれを組み込む製品を生み出す半導体産業は半永遠に成長するといえる。

(2017/08/17)
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