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5G時代のWi-Fiネットワーク、スモールセルになる

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5G(第5世代の無線通信ネットワーク)時代のWi-Fiのあるべき姿はどうなるか。スマートフォン時代になってWi-Fiが普及した。「日本は世界中で大きな成功を収めた市場だ」、と来日したWi-Fi Allianceマーケティング担当VPのKevin Robinson氏(図1)は、東京五輪に向けたWi-Fi新技術を明らかにした。

図1  Wi-Fi Allianceマーケティング担当VPのKevin Robinson氏

図1  Wi-Fi Allianceマーケティング担当VPのKevin Robinson氏


Wi-Fiを搭載したデバイスは、今や年間30億台出荷され、現在80億台のデバイスが毎日積極的に使われている。地球人口のほぼ一人に1台の割合になってきた。それは16年以上にわたる継続的なイノベーションを続けてきたからだ、とRobinson氏は言う。これからもWi-Fi規格は進化する (図2)。


図2 Wi-Fiチップセットは進化・成長する 出典:Wi-Fi Alliance

図2 Wi-Fiチップセットは進化・成長する 出典:Wi-Fi Alliance


5G時代は、データレートが最大10Gbpsとなり、応答速度に相当するレイテンシは1ms、そして低消費電力、という大雑把な仕様が決まっている。データレートが高速であるということは、一般にキャリア周波数は高くなる。帯域を広めるためだ。このため最大の周波数としては60GHzのミリ波が検討されている。ミリ波は波長がmm(ミリメートル)単位に小さくなるため、アンテナ設計、その他はmm単位になり、自動的にアンテナ回路は小型になる。

ところが周波数が高くなるにつれ、電磁波の性質として直進性が増す。これまでのサブギガ(1GHz以下)のような比較的低い周波数帯だと360度に渡って電波を発信できた。ビルなどの建物があっても電波は回り込むことができた。しかし、直進性が増せば、いわば狙い撃ちの携帯電話に電波を飛ばすことになる。電波が来た方向に向けて電波、すなわち発射ビームを作るため、ビームフォーミングと呼ばれる技術が必要になる。もし携帯電話の使用者が動いている場合は、その動きに合わせてビームフォーミングを調整していく。電話使用者を追いかけるのでビームトラッキングともいわれる。

ところが従来のLTEは基地局から半径約2kmの範囲に渡って電波を発射するが、5Gになると電波の到達距離は短くなり、カバー範囲は狭くなる。このためLTEと共存してスモールセルを、その範囲内に作らなければならなくなる。このスモールセルは従来、基地局と同様の電波を使っていたが、5GではWi-Fi電波を使う可能性が出ている。実際、Wi-Fi規格のWiGigは60GHz帯のミリ波を使う規格であるし、こうなると、もはや5Gと変わらない。

国内では2020年の東京オリンピック/パラリンピックに合わせて、Wi-Fiホットスポットを全国各地の官公庁や学校、美術館など公共の場所3万ヵ所に設置すると計画されている。さらにスマートストリートハブを導入してWi-Fiをつなぎ緊急情報などを提供する。オリンピック/パラリンピックのような競技場でWi-Fiを導入することでネットワークを管理することが可能になる。米国のアメリカンフットボールの試合「スーパーボウル」でWi-Fiを導入した結果3時間で12TBのデータ量を消費したという。

スポーツ競技場やコンサートなど、人々が集まる場所でWi-Fiやスモールセルを管理 (マネージ) することが5G時代には必須になるだろう。マネージドWi-Fiネットワークでは、ホテルやスタジアム、空港や広い駅などがWi-Fiを提供する場合に、シームレスにアクセスポイント間をつなぐことができるようになり、ユーザーは広範囲なWi-Fiコネクティビティを期待するようになる。ここではネットワークオペレータによって管理され、カバレージや性能、ネットワークアクセスを最適化する。

Wi-Fi認定済みのVantage仕様のデバイスは、Wi-Fiネットワークへのアクセスをセキュアな軽いタッチで可能にするという。それは5GHz帯の802.11acやほかの方式にも使えるとしている。また、広い飛行場などでは、アクセスポイントから隣のアクセスポイントへと移動する場合でもデータのハンドオーバーは、早くスムーズに行われるという。

(2017/08/16)

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