セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

ZB時代のインターネットトラフィック

|

世界のインターネットトラフィック(インターネット上を行き来するデータ量)は、2016年の1.15ZB(ゼッタバイト(注))から2021年には3.3ZBに倍増する、とCisco Systemsが発表した。2021年までの年平均成長率CAGRは24%だが、日本のトラフィック量は26%と世界よりも高い成長率を見込んでいる。

図1 Cisco Systems社Strategy, Technology and Innovation担当VPのDoug Webster氏

図1 Cisco Systems社Strategy, Technology and Innovation担当VPのDoug Webster氏


このほど来日した、Cisco Systems社Strategy, Technology and Innovation担当のVPであるDoug Webster氏(図1)によると、Ciscoが調査するインターネットトラフィックの指数VNI(Visual Networking Index)の予測には定評あり、2012年に2016年までの通信トラフィックなどのVNIについて調査したが、その時の予測が良く一致していた。当時の予測は年平均成長率CAGRが2016年まで29.1%だったが、2017年には2016年まで29.9%だったとレポートしていた。

日本のIP(Internet Protocol)トラフィックは2016年の48EB(エクサバイト)が2021年には約3倍の168EBになるとCiscoは予想する。IPトラフィックすなわちインターネットトラフィックの伸びも日本はすさまじい。これは日本ではブロードバンドが世界よりも普及しており、さらにインターネットにつなげる機器の割合がインターネットユーザーの数よりも多いからだ。しかもインターネットにつながるデバイスの数の伸びも多い。さらに2016年におけるブロードバンドのデータレートは世界が平均27.5Mbpsであるのに対して、日本は67.4Mbpsと高い。2021年にはこれが世界では53Mbpsになるが、日本は103.8Mbpsにもなると予測する。

日本はインターネットユーザー数が2016年に1億600万人だが、2021年には1億1100万人と微増にとどまるものの、ブロードバンドユーザーが飽和しているほど多いということになる。世界でのインターネットユーザー数は2016年の33億人が2021年には46億人に急増するとしている。

IPトラフィックを増加させる主な要因は一般に、ビデオの視聴である。実際、世界では2016年にIPトラフィックに占めるビデオの量が73%だが、日本でも72%とほとんど変わらない。2021年には世界が82%に増えるのに対して日本では79%どまりになるとみている。ただ、日本がほかの国々と最も大きく違うのは、固定通信のブロードバンド化である。光ファイバ(FTTH: Fiber To The Home)の普及によりブロードバンド化が進んでいることが大きい。

モバイルの伸びは少し緩い
日本は光ファイバが普及しており、ブロードバンドのデータ速度は世界平均よりも速いが、モバイルの伸び率は残念ながら世界よりもやや鈍い。世界のモバイルデータトラフィックの量は、2016年に毎月平均7.2EBだが、2021年には48EBになると予想しており、そのCAGRは46%に上る。一方、日本のモバイルデータトラフィックは2016年の毎月平均0.5EBが2021年に2.2EBとなり、CAGRは33%になるとみている。

それでも、「日本はモバイルの好きな国民だ」、とCisco Systems社のDoug Webster氏は語る。世界全体では、特に発展途上国では固定通信回線を敷設していない地域が多く、いきなりモバイルに進んでいる。こういった地域はモバイル比率が高い。Webster氏はむしろ日米で比較している(表1)。


表1 2021年における日米の違い

表1 2021年における日米の違い 出典:Cisco Systemsの数字を元にセミコンポータルが表にまとめた

出典:Cisco Systemsの数字を元にセミコンポータルが表にまとめた


表1でみる限り、日本は米国に比べ、固定通信でもモバイル通信でもブロードバンド化が進んでいる。米国ではケーブルテレビが定着しており、ケーブルインターネットが普及しているのに対して、日本は光ファイバが定着しており、ブロードバンドインターネットが早かった。モバイルインターネットに対しても、スマホでテレビや動画を見るという文化が日本は定着している。

(2017/08/10)

編集注)TB(テラバイト)がGB(ギガバイト)の1000倍、その上のPB(ペタバイト)はTBの1000倍、さらにEB(エクサバイト)はPBの1000倍、そしてZB(ゼッタバイト)はEBの1000倍という単位になる。

月別アーカイブ