Intel、エネルギーデータ収集・分析プラットフォームを提案
「デジタルトランスフォーメーション」。エレクトロニクス技術を使って、社会を変革するテクノロジーを最近こう呼ぶ。エレクトロニクスの肝はもちろん半導体。半導体を使うエネルギーの変革をIntelが進めている。「スマートメータ」をもっと賢くして電力コストも抑えるという「エネルギーコレクティブプラットフォーム」(図1)をIntelが提案した。
図1 Intelが考えるエネルギーコレクティブプラットフォーム スマートメータとHEMS(Home Energy Management System)、IoTゲートウェイを一緒にしたようなコンセプトである 家庭の電力代を安くし、発電量を平準化し、電力ビジネスにサービス業者も参入できるようになる
このエネルギーコレクティブプラットフォームは、IoTのゲートウェイの機能も持ち、現在のあまり賢くないスマートメータが30分おきに電力量を測っているのに対して、リアルタイムで電力量を測り、それをクラウド経由で電力会社に送る。電力会社が広い地域の中で電力を融通しあえれば、電力コストはもっと安くなるはずだ。そのためには消費電力量が今いくらなのかリアルタイムで知りたい。例えば、東京電力を使っているユーザー世帯全員がこの賢いメータを持ち、それをクラウドに上げて全体の電力量を地域ごとに把握し、電力量を平準化できれば、ピーク電力の最大値を下げることができる。つまり電力代は安くなる。
これまで、真夏にクーラーをガンガン回すような最大電力使用時に合わせて発電設備を作ってきた。このため電力料金は世界一といわれるほど高い。しかし、ピーク時の電力をもっと賢く、あまり使っていない地域からたくさん使っている地域へとリアルタイムで電力を融通しあうことが将来できれば、電力代はもっと安くできる。最大発電能力をもっと下げ、少ない設備で発電しても電力を安定供給できるからだ。製造業のコスト競争力は増し、世界の産業とも同じ電力コストで競争できるようになる。日本の製造業の競争力低下の要因の一つに高い電力コストが挙げられている。
Intelが提案するエネルギーコレクティブプラットフォームは、家庭内の電力量は言うまでもなく、家庭電力用バッテリーや電気自動車のバッテリーの蓄電量も測定し、リアルタイムで電力使用状況をデータ分析するもの。そのデータを電力会社が使えば、もっと安定な電力を安く供給できる。電力会社も競争の時代に入ったからこそ、テクノロジーを使って電力料金の引き下げを実現すると消費者に訴求できる。さらに、電力会社にとって、需要予測がより読めるようになる。サービス状況を管理する事業者も現れることになり経済活動はより活発になる。
Intelの発表会では、東京電力パワーグリッドの取締役副社長である岡本浩氏は「データを利用できれば、さまざまなビジネス事業者にデータを提供する新サービスが生まれる」と期待する。「Intelのテクノロジーは(東電が提供する)宅内IoTプラットフォームを実現できると思った」、と述べている。岡本氏がイメージする宅内IoTプラットフォームは、小型であること、処理能力が十分にあるほど性能が高いこと、さらにクラウドと連携してSOTA(Software On The Air)のようにソフトウエアのアップデートができること、である。その際セキュリティも確保していることは言うまでもない。同氏は電力ネットワークに合わせて、データも提供していきたいと述べている。
図2 今回Intelが示したエネルギーコレクティブプラットフォームのコンセプトモデル 持っているのはインテル社インダストリー事業本部アジアパシフィック・ジャパンエネルギー統括担当の執行役員である張磊氏
今回、Intelが示したモックアップ(図2)では、FPGAを使った専用チップをコントローラに用いた。インテルの張氏は、SOTAでソフトウエアを更新する場合には、CPU内蔵のFPGAを使えばよい、と述べている。製品となるときは、Intelの製品群の中の制御用のCPUを使う手もあり、選択肢は広い。