セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

多数のドローンを安全に管理する運航システムの国家プロジェクト始動

|

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、ドローンなど無人航空機を安全に飛行させるための運航管理システムを構築する国家プロジェクトを立ち上げた(図1)。多数のドローンの管理を対象とする。2017年度から2019年度までの3年間のプロジェクトで、NECとNTTデータ、日立製作所、NTTドコモ、楽天の5社が共同で多数のドローンが飛び交う総合的な運航管理システムを構築する。

図1 多数のドローン運航管理システムに係わる面々 左から、JAXA、楽天、NTTドコモ、NEDO、経済産業省、NEC、NTTデータ、日立製作所の代表者たち

図1 多数のドローン運航管理システムに係わる面々 左から、JAXA、楽天、NTTドコモ、NEDO、経済産業省、NEC、NTTデータ、日立製作所の代表者たち


小口の物流がドローンに置き換わると、1平方kmに1時間で100台のドローンが飛び交わると想定しており、これらが安全に衝突せず行き来できる運行システムを目指す。飛行実験は福島県に設けたロボットテストフィールドを活用する。2019年までに南相馬市から浪江町の目視を超えた13km以上の距離を10台のドローンを使って衝突せずに運航することを実証する予定。

ドローンが飛ぶための情報提供機能(気象情報や地図情報などのサービス業者による)を活用して、さまざまなドローンの運航管理を行う機能を構築し、さらにそれらを管理する運航管理統合システムを構築する。楽天は物流サービスの運航管理を受け持ち、NTTドコモは通信サービスを受け持つ。運航管理総合システムは、飛行計画の策定や承認を行うフライト管理をNEC、実際に飛行している状態を管理する運航状況管理を日立製作所が受け持つ。NTTデータは空域情報管理を受け持つ。

このプロジェクトでは、まず複数のドローンを飛ばしてお互いにぶつからないようなシステムを構築することが先決で、ドローンそのものの製作には関与しない。各社が実験用のドローンを用意する。

実用では、必要なスペックを満たすドローンしか飛行を認可しないようになるかもしれないが、この研究開発のプロジェクトでは安全飛行を実証することが目的であり、ドローンにどのような機能をつけるべきかについては、計画を進めながら検討していく。各ドローンの相互運用性(インターオペラビリティ)についてはやはりどこかで進めていただきたい、とNEDOは答えている。

通信は基本的にセルラーネットワークを利用する。実際には用途にもよるがLTEネットワークを使うか、その上のIoT用のNB-IoTやCat-M1などネットワークを使うか、これから検討していく。海外とのビジネスに備え、できるだけ既存のシステムを使うようにする。

このシステムではドローンの自律飛行をさせつつ、互いにぶつからないようにするための指示を出すなどの問題を解決しなければならない。また、運航管理システムの全体設計の研究は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のこれまでの研究実績を活用する。JAXAではこれまでも5km×5kmにエリアに25機の無人飛行機を飛ばす運航シミュレーションを開発してきており、JAXAの知恵も借りるとしている。

海外では、QualcommやNokiaなどがセルラーネットワークでドローンを自律飛行させる実験や、国内でもKDDIなどが弁当の宅配サービスの実験を行っている。また300台のドローンを飛ばして互いにぶつからないような実験はIntelも行っており、NEDOは焦りを感じている。Intelは昨年のクリスマスシーズンにフロリダ州のウォルトディズニーワールドで各ドローンにLEDを点灯させ、夜空をキャンバスとして光で絵を描くというイベントを開催した。多数のドローンを安全に飛ばす実験は、すでに行なわれており、今回はさらに目視外の距離まで飛ばすという飛行距離も加えた実験で、一気に追いつき、追い越すとしているようだ。

システムを理解すれば、この運行管理システムやドローンに必要な半導体は見えてくる。自律飛行には測距センサや、モータの回転を変えるインバータ、飛行軌道を想定するグラフィックス/AR技術、セルラー用トランシーバ、これらに使われるA-D/D-Aコンバータやセンサフュージョン、制御用マイコン、演算用プロセッサ(マイコンで代用できるかも)、インタフェースや周辺回路に必要な簡単なFPGAなどが求められるであろう。

(2017/06/15)

月別アーカイブ