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IoT端末側のハード・ソフトのプラットフォーム作製を狙うコンソーシアム設立

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IoTシステムの中で、センサ機能を持つIoT端末からゲートウェイまでのレイヤーをエッジと呼ぶが、そのエッジの中でのハードウェアとソフトウエアの共通プラットフォームを作ることを目的とする団体「エッジプラットフォームコンソーシアム」が設立された。

図1 任意団体「エッジプラットフォームコンソーシアム」の理事長に選出された東京工業大学の益一哉氏(左)と理事の齋藤昇三氏(右)

図1 任意団体「エッジプラットフォームコンソーシアム」の理事長に選出された東京工業大学の益一哉氏(左)と理事の齋藤昇三氏(右)


この団体は、IoT端末の中でできるだけ標準化できるモノを共通化してコストを下げようという目的で設立された。IoT端末はさまざまな工場や流通・倉庫、あるいはリテール(商店)など産業用が有望とされているが、問題は工場ごと、あるいは工場内の配管ごとで仕様が異なる超少量多品種の世界となる。従来なら少量多品種=コスト高、であるが、IoTシステムでは低コスト化は至上命題。このため、少量多品種製品をいかに安く作るかが最大の課題となる。

少なくともIoT端末を開発する場合に、差別化すべき回路やシステムだけに集中し、それ以外は標準化して共通化しておくことは低コスト技術の一つである。その共通仕様を議論してプラットフォームを構築することがこの団体の狙いである。団体が発足したのは本年の5月31日。このほど、その狙いについて発表した。

このコンソーシアムの理事長となったのは、東京工業大学の科学技術創成研究院研究院長の益一哉教授。2017年6月5日現在で、29社、賛助会員2機関からなる。国からの出資を求めない任意団体であり、運営は一般会員の会費で賄う。資本金5億円以上の大企業が、半年で10万円、それ以下の中小企業は同2万円となっている。

理事会の元に、運営委員会、ワーキンググループ、事務局があり、共通のプラットフォームの仕様を決めるのがワーキンググループだ。IoT端末内の仕様だけではなく、データ解析や見える化するためのソフトウエアを開発するためのソフトウエアプラットフォームも開発する。

端末の内部は、多種類のセンサ、センサハブ、マイコン、メモリ、I/Oインタフェース、パワーマネジメント、トランシーバなどからなる。特にセンサは用途ごとに全く異なる特性を持つが、カスタマ対応ではコストは下がらない。また、エネルギーハーベスティング構成をとることも多いため、温度差や振動、光(ソーラー)などの自然エネルギーによっても仕様は異なる。電源となるDC-DCコンバータは、発電素子によって、入力電圧が数mV、数十mV、数百mVと異なるため、入力電圧範囲の広さが求められ、出力を3.3Vあるいは5Vにまで昇圧しなければならない。

それぞれをバラバラに設計していてはコストがかさみ、開発期間が長くなる。標準化がマストなことは言うまでもない。この団体の目的は共通部分の開発であることから、こういった部分の標準化を決めようという訳だ。

しかし、例えばスマートフォンの内部ではMIPIなど決まったインタフェースがあり、これを流用してもよいはず。これについて同コンソーシアムの理事で、IoTデバイス開発のデバイス&システム・プラットフォーム開発センター代表取締役会長でもある齋藤昇三氏は、IoTデバイスはエネルギーハーベスティングでも動作できる低消費電力であることが不可欠だから、既存のインタフェースでは対応できない場合には、その見直しが必要になる、と述べている。もちろん、既存のインタフェースでもテストしてみる必要があり、さらなる低消費電力化が必要なら新しいインタフェースが必要だろうとする。エッジ端末にあった低消費電力の仕様が有効であることがわかれば、それを世界の標準規格に提案することもありうるという見解を示している。

理事長に就任した益氏は、IoTで求められるもう一つの要素は、開発期間の短縮であるから、今年中に何らかのプラットフォームを作ることを目標としていると答えている。IoTではセンサからのデータを解析し、センサの仕様を用途ごとに求める必要があり、実際にデバイスを作って評価することがまず重要である。その後、実際のユーザーの要求が出てくるため、とにかくモノを作り、それをユーザーに評価してもらうことの繰り返しで、実際の予知保全などに必要な所望のしきい値を見つけることができる。だからこそ、早期のもの作りが望まれる。すでにAnalog DevicesやIntelは、顧客とのデータの評価段階に入っている用途もあり、コンソーシアムの最初の結果が待たれる。IoTビジネスでは、各種センサやセンサハブ出力などから、予防保全のためのしきい値を求めなければならないため、顧客と密着しながら求めていくことが最優先だ。

ワーキンググループには、モノを作り、共通のプラットフォームを作るグループだけではなくビジネスモデルもIoTシステムでは重要なので、ビジネスモデルを生み出す作業グループもありうると齋藤氏は見ている。

結果を急ぐとは言え、IoTシステム構築はこれから始まるビジネスである。急ぐと同時にプラットフォーム化、標準化を同時並行に進めていくことが、これからの勝ち組につながる。ハード、ソフトとも再利用できるものは再利用しながらも、差別化できるほどの低消費電力プラットフォームを創造するなど、全て同時並行で進めることで新しいデジタル時代に対応できる技術を生み出せれば、日本復活も夢ではない。

(2017/06/06)

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