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IoTブームで再び注目を集めるエネルギーハーベスティング

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身の回りにある自然のエネルギーを電源とする、エネルギーハーベスティング技術がIoTセンサの立ち上がりによって、普及が加速しそうだ。その技術基盤を後押しする「エネルギーハーベスティングコンソーシアム」の参加企業・機関も増えつつある。

図1 コンクリートの予防保全にIoTが使われる 出典:NTTデータ経営研究所、土木研究所

図1 コンクリートの予防保全にIoTが使われる 出典:NTTデータ経営研究所、土木研究所


IoTシステムでは、端末を10年くらいは放置しても動くようにしたい、という要求が強い。橋梁や基礎土台など堅固なコンクリートなどの劣化を検出して、予知保全に生かしたい(図1)からである。このためには消費電力は極力減らさなければならない。バッテリで10年間持たせる手はあるが、長期保存における電池の液漏れや錆によって劣化する恐れがある。端末の中でも最も信頼性の低い電池を嫌われる。このため、電池を使わず身の回りのエネルギーを電源にするエネルギーハーベスティング技術がIoTと共に浮上しつつある。

また、エネルギーハーベスティング技術は10年ほど前から登場していた。筆者も2008年の欧州出張で初めてEnOceanのスイッチ製品をElectronica展示会で見た程度だった。以来、欧州のEnOcean社を中心にAllianceを組み、ホテルやビルの部屋の入り口に設けたカードを入れの重みで電灯スイッチを押す、無線スイッチとして使われていたが、国内では実用化が遅れていた。ロームがEnOcean Allianceに沿った製品を出してはいたが、大きな市場を形成できた訳ではなかった。国内では環境発電と命名して、振動や温度差、ソーラーなどによる発電を重視しており、それを使った応用製品についてはあまり研究されず、環境発電はすたれていった。

ところがここにきて、IoTという大きな市場が見えてきたことで、エネルギーハーベスティング技術は再び注目されるようになってきた。ただし、従来と大きく違うのは、発電だけに重きを置くのではなく、発電素子、DC-DCコンバータなどの電源回路、蓄電(キャパシタ)といった一つの電源システムとして見るようになったこと。実用化するには、起電力の大きい発電素子、20~30mVから3.3Vまで効率の良く変換できるDC-DCコンバータ回路、リークが少なく内部抵抗の小さなキャパシタ、といった電源市場の要求を満たすものが増えてきた。

IoT端末には、複数のセンサやアナログ回路やセンサハブ(センサフュージョンともいう)、マイコン、送信機などが必要とされるが、全てに渡って低い消費電力を保たなければならない。IoT端末によってはGPS機能の要求もある。さらに飛ばすデータが盗まれないように、あるいは外部から侵入されないようにセキュリティを確保する必要もある。使用環境によっては、腐食しやすい筐体やパッケージの見直しの必要もある。

加えて、通信ネットワークもIoT時代には、SigfoxやLPWA(Low Power Wide Area)などIoT専用のネットワークが実用化されるようになっている。従来のワイヤレスセンサネットワークではZigBeeで代表されるようにセンサからセンサへデータを送り最後のゲートウェイからインターネットに飛ばすネットワークが使われていたが、通信が途切れることがよくあり信頼性で問題が多かった。IoT専用ネットワークでは、通信速度は数十kbpsと遅いが、低消費電力でしかも電波の届く距離は十数kmとセルラーの2kmよりも遠くまで飛ばせるため、設備投資が安くて済む。

NTTデータ経営研究所が事務局を務める、エネルギーハーベスティングコンソーシアムは、2010年5月に設立され、当初は13社でスタートしたが、2017年3月現在44社にもなった、とNTTデータ経営研究所社会・環境戦略コンサルティングユニットのシニアマネージャーである竹内敬冶は言う。このコンソーシアムではIoT端末に係わるほとんどすべての企業が加入しており、センサから蓄電技術、無線技術、電源技術などそれぞれ得意な企業が入っている。このため商品化・実用化を早めることができる。海外機関や、関係する標準化推進機関との連携だけでなく、国内の関連省庁とも連携している。サプライチェーンから潜在顧客までそろっており、ビジネス機会を増やしている。

最近は、セキュリティを強化するため、ソフトウエアによる相互認証だけではなく、データを暗号化するハードウエアにも対応している。それも従来の128ビットの暗号ではなく64ビットの軽量暗号を使いながら、何回通信したかをカウンタで数えておき、その回数で暗号を変えたり、ビット長を変えたりすることでセキュリティを高める技術を使うようになってきているという。

また、コンソーシアムの会員でもある村田製作所は、IoTを搭載する通信モジュールを設計する実力を持ちながらも、セラミック部品技術も持っているため、温度差を利用するペルチェ素子/ゼーベック素子なども製造できる。また電力中央研究所は、最近IoTのための組織を作ったという。送電網における電力インフラのモニターとしてIoTを使うための研究を手掛けるのであろう。

今後、IoTは使える技術であることがわかったため、組み込みシステム関係企業や団体とも協業していきたいとしている。

(2017/04/12)

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