日立、AIで犯罪を防ぐ
日立製作所の研究開発グループは、防犯カメラのネットワークを利用し、人の顔・姿かたち・服装などの目撃情報から、AI(人工知能)を使って人物を特定し、さらに追跡するシステムを開発した。犯罪防止が狙い。
図1 人間の持つ12種類、100項目以上の特徴をデータベースに入力する 12種類の項目は、髪型、髪色、上半身の服装と色、持ち物の有無や種類、下半身の服装と色、履物の種類と色、装飾品、性別、年齢。
大規模なイベントや広域の公共空間での警備は、2020年の東京オリンピック/パラリンピックに向けニーズが高まると日立は見ており、カメラ情報だけではなく目撃情報も犯人の解析に使える。このためAIを使い人物の特徴を100項目以上に渡って細かく分析しようというのが今回開発したシステムだ。顔認識は言うまでもなく、服装(色や柄、種類、靴など)や行動(止まっている、歩いている、走っているなど)、全身の姿・形(やせ形、太り気味、頭髪など)、装飾(眼鏡、杖など)の100項目以上の特徴を12種類に分け(図1)、ニューラルネットワークのエータベースに入力する。
従来の入力方法では、これらの特徴を性別や上半身の服装、荷物の有無など個別の識別用AIに入力していたため、リアルタイム処理が困難だったという。これに対して、日立は人間として識別するための共通の項目だけを最初に共通のニューラルネットワークで処理し、性別や上半身の服装、荷物の有無などを簡単なニューラルネットワークで処理することで処理時間を従来の1/40に短縮したという。
ここでは、特徴が似ている人物を見つけると、四角で囲み、特徴を表すインデックスをデータベースに入れ、重みを加える。目撃情報で服の色や顔の特徴なども入力する(図2)。
図2 人物の特徴から場所、地図、ニューラルネットワークやそのインデックスなどを表示した画面
次はその人物をカメラで追跡する。リアルタイムで犯人らしき人物を追跡すると、最初は持っていた荷物をある時刻では持っていないことがわかれば、その間に荷物を置くあるいは手渡した場所を特定できる。カメラの追跡では、その人物の固有情報をデータベースにある情報と比べることになる。ここでは固有情報のどの特徴を検索すれば見つけやすいかがカギとなる。高速のベクトル検索データベースを使い、1秒以内に検索する。顔検索よりも3倍発見率が上がったとしている。特定は人間にゆだねるという。
日立は、これまで持っている技術と一緒に使うことで大きなイベント会場の安全性はより強まるとみている。これまでの技術としては、ゲートには静脈認証や、爆発物探知装置を、
会場内には高機能な監視カメラを、持っており、さらに人物を検出するこれまでの映像解析技術や交通渋滞を予測する交通シミュレーション技術もある。
同社は今後、警察の協力を仰ぎ、さらに使えるレベルに持っていきたいとしている。今回の技術開発には警察は関係していなかったとしている。