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企業同士のつなぎ役に徹する東北大CIES

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「大学という中立性を生かし、大企業と地元の中小企業をつなげていく」。このようなミッションを持つ東北大学の国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)は、技術と人材を活用して地域連携を実現させ始めた。

図1 東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター長 遠藤哲郎氏

図1 東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター長 遠藤哲郎氏


CIESの開発テーマは絞られてきており、大きく分けて二つになった。M(magnetic)RAMとそれを利用するIoT(Internet of Things)デバイスが一つであり、もう一つはGaNパワーデバイスである。CIESセンター長の遠藤哲郎氏(図1)は、CIESの三つの柱として、MRAMデバイスとカーエレクトロニクス用のGaNパワーデバイス、そして地域連携を掲げる。

MRAMは今、量産出荷直前に来ているとする。もはや産業界が中心になる時期に来たとしている。MRAMプロジェクトに韓国のSamsungも参加するようになった。量産が近い企業なのに参加するのは、ビット不良の問題や誤り訂正に必要なテールビットの設計問題などメモリの完全理解が求められるために大学と共同で研究するようになったという。

またGaNパワーデバイスに関してはパナソニックと共同で電源回路やモータ駆動回路を設計してみるなど、カーエレクトロニクスへの応用を念頭に置いたプロジェクトが本格稼働した。GaNはSi上に形成するGaN on Siが世の中のトレンドであったが、GaN on GaNの研究も始めた。GaN on Siは耐圧こそ600V程度だが、シリコンのドライバなどの回路を集積できるというメリットがある。一方、GaN on GaNだと縦型トランジスタが可能になり、1200VといったSiCと同じあるいはそれ以上の耐圧をとることができる。

パワーデバイスとしての研究はSiCの方が先行し、GaN on GaNはこれまでLEDで研究開発が積まれ後発組ではある。しかし、SiCは昇華する結晶であり、成長がこれまでも難しかった。しかし、「GaNは材料特性が電子移動度や耐圧の点でSiCよりも優れている」と遠藤氏は述べている。結晶成長のメカニズムと高品質化はこれから実証していく。

企業間の「糊」の役割を果たす大学としては、MRAMやGaNなどのデバイスを拠点にしようと考えている。2016年に、文部科学省のプロジェクトとして、大学を拠点にするプロジェクトの募集があり、「産学共創プラットフォーム共同推進プログラム」(通称OPERA)として応募した結果、4件の研究が採択された。東北大の電子デバイスに加え、山形大学の有機EL、名古屋大学の自動車関連のマシン、広島大学のバイオ技術が選ばれた。これらの全てが大学を拠点として地域の企業とを結ぶプロジェクトとなる。

東北大学の周りにはITとクルマの有力企業が多い。例えば、匠ソリューションズは、LSIやFPGA、ファームウェアの設計業務に加え、デジタルおよびアナログ回路の検証業務やプロトタイプの検証業務も請け負っている。またホンダ系列のティア1サプライヤであるケイヒンの研究開発センターが角田市にある。トヨタ系列のデンソーのように半導体を手掛けるかどうかはまだ不明だが、遠藤氏は期待している。アルプス電気も仙台開発センターを持つほか、宮城県内に古川工場、涌谷工場、角田工場、北原工場と4つの工場を持つ。県内の企業へは、宮城県と経済産業省東北経済産業局が積極的に働きかけていると遠藤氏は言う。

ケイヒンやアルプス電気のようなグローバル企業と地元の優れた中小企業を結ぶのが東北大学の役割だと同氏は認識している。遠藤氏は「企業同士がB2Bとしていきなりアライアンスを組むと、本当に将来にわたって組むべきパートナー企業としてふさわしいかどうかわからないまま続けるとお互い不幸になる。だから大学を間に挟むと緩いアライアンスとなり、リスクヘッジになる。これをBUB(Business University Business)と呼んでいる」と、遠藤氏は語る。しかも、一般に企業がイノベーティブであればあるほど、大企業と下請けという上下関係を嫌うため、中立な大学がクッションとして水平分業のアライアンスを手伝う意味は大きい。BUBは大学の新しいファンクションだと文科省が見ているという。

ただし、どの大学でもこれができるという訳ではなさそうだ。遠藤氏は、「東北大学が企業同士をマッチングさせるのに、技術と人材が必要。東北大の強みは技術を持っていることだ」と述べる。技術があれば企業にアドバイスを提言できる。単なる御用聞きで務まらないという。また、産学連携が強すぎるため、大学が研究発表をなかなかさせてもらえないことが多いという欠点はある。

(2017/03/28)

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