Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 産業分析

最高性能3Gbps弱が可能なWi-Fi Certified ac Wave 2

Wi-Fi製品の認証と相互運用性(インターオペラビリティ)を保証する非営利業界団体であるWi-Fi AllianceはマルチMIMO方式で最大4つの空間ストリーム技術を使い、最高性能3Gbps弱という高速性能を得られるWi-Fi Certified ac Wave 2規格認証を始めた。

図1 Wi-Fi Allianceマーケティング担当VPのKevin Robinson氏

図1 Wi-Fi Allianceマーケティング担当VPのKevin Robinson氏


Wi-FiはモバイルのネットワークRAN(無線アクセスネットワーク)を補完するインターネット接続ネットワークとして、ますます成長し続けている。Wi-Fi Allianceのマーケティング担当バイスプレジデントのKevin Robinson氏(図1)は、Wi-Fiは成熟した技術でありながら進化し続ける規格だ、と述べている。

現在使われている最高性能のIEEE 802.11acは、5GHzと2.4GHzの周波数帯を使う高速Wi-Fi通信だが、今回のWi-Fi Certified ac Wave 2規格は、Wi-Fi Allianceが認定した、802.11acの最新版といえる。最高性能は3GHz弱で、4本のMINOアンテナを利用して、4つの空間ストリームを同時に利用でき、4人同時または一人で4倍の性能を得ることが可能である。

Wi-Fi Allianceが認証したこの規格Wave 2には主な特長が4つある;
1. マルチMIMO(multiple input multiple output)と呼ばれる最大4本のアンテナを使って、複数のデバイスに同時にデータを送信できる
2. 最大のチャンネル幅を80MHzから160MHzの幅に拡大しているため高速化できる
3. 空間ストリームのサポートを従来の3つから4つへと増やし、これも高速化と複数のデバイスが速度を落とさずに使える
4. 周波数帯は5GHzを使う。5GHz帯での追加チャンネルをサポートして、利用可能な周波数帯を効率的に活用できる
要は、性能向上と同時にマルチタスクができることが最大の特長といえる。

Wi-Fi Allianceとは、Wi-Fi規格の認証を行う機関であり、認定を受けると認定製品ごとに相互にWi-Fiにつながることが保証される(相互運用性:インターオペラビリティ)。これまでに認定プログラム数は15を超え、世界18カ所にある認定テストラボを通じて世界で600社以上のメンバー企業の製品が1万5000点以上認定を受けている。今後のミリ波を使ったWiGig規格や、低パワーで遠くまで電波を届かせるIoT向けの802.11ah Halow規格なども認定作業を行っていく。WiGigは今年中に認定される計画だ。

日本にもWi-Fi Allianceの窓口がある。無線LAN連絡会が2016年3月にWi-Fi Allianceの戦略的パートナーとなった。日本からも117社がこのAllianceに参加している。今後のHalow規格のようなIoTを含めた市場でも無線LAN連絡会がフォローする。

セルラーネットワークは、LTEからLTE-A(Advanced)、5Gへとデータレートの高速化に対応するネットワークとして進化しているが、Wi-Fiは5Gと競うものではなく、共存していくもの、と同AllianceのRobinson氏は述べている。5Gでの最高性能はミリ波を利用する技術になるが、ミリ波は直進性が強いため、ビームトラッキングのような新たな技術を導入したり、スモールセルとして使われたりする可能性が高い。Wi-FiのマルチMIMOは、セルラー的な考えのアンテナ技術であり、5Gの規格は複数登場する可能性もある。

(2016/08/02)
ご意見・ご感想