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Bluetoothは4.2から5へジャンプ

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Bluetoothの進化が止まらない。これまで先端のBluetooth4.2からBluetooth 5という次世代Bluetooth規格の概略が固まった。低消費電力のまま、通信距離が4倍、スピードが2倍となる。しかもブロードキャスティング能力も大幅に向上。IPベンダーのCEVAはBluetooth 5の開発キットRivieraWavesをリリースした。

Bluetoothは最初の仕様から、低消費電力のLE(Low Energy)版やSmart版などへと進化し、ビーコン機能や、IoTに合わせたBluetooth Mesh(メッシュネットワーク仕様にして数万台のBluetoothデバイスを接続できるネットワークトポロジー)などへと進化が進んでいる。

IoT時代はさらにNB(Narrow Band)-IoT規格も登場し、LTEネットワーク上でデータレートの遅いIoTデバイスを運用できるようになっている。NB-IoTはデータレートが1Mbpsにも達しないほど低いが、ゲートウェイがなくても低消費電力でモバイルネットワークに接続できる。低消費電力ならBluetooth LEやMeshで代用できるが、低消費電力でもモバイルネットワークに直接つなぎたい場合にはNB-IoTが適している。

今回のBluetooth 5の機能をプレスリリースの範囲で見ると、IoTへの応用を狙ったものといえそうだ。消費電力はBluetooth 4.2並みに下げたまま、通信距離を伸ばし、データ転送速度も2倍に上げる。さらにブロードキャスティング機能を高め、ビーコンや位置検出、ナビゲーションなどのサービスにも対応している。この規格を発表したのは、Bluetooth SIG (Special Interest Group)であるが、正式なリリースは2016年末から2017年はじめになる見込みだ。

データブロードキャスティング能力を8倍に高めたということは、IoTだけではなく、ワールドカップサッカーや東京オリンピック/パラリンピックなどのイベント会場で、来場者に知らせたい情報を一斉に送ることができる。もともとBluetoothは同じ通信機能を持ったデバイス同士をペアリングすることで初めて通信できるような仕組みだった。このペアリング機能にこだわらなくなったともいえそうだ。

GPSやGNSSなど衛星を利用した位置検出は、衛星からの電波を受け取れないビルなどの屋内や地下街では使えないが、Bluetoothビーコン機能やスマホ内部の加速度・ジャイロ・磁気などのセンサと組み合わせることによって、地下街でもトラッキングできつつある。ビーコンはまた、商店街などで顧客に特売情報などのメッセージを発信するためのきっかけに使うことができる。Bluetooth 5の機能を使えば、ビーコンにメッセージまで載せられるようになる可能性もある。

市場調査会社のABI Researchは、2020年までに3億7100万台のBluetoothを使ったビーコンデバイスが出荷されると予想している。さらにBluetooth 5のブロードキャスティング能力を強化したことで、ナビゲーションや位置の特定などの機能を利用した「コンテキストアウェアネス」機能にも使えるようになる。空港や駅を利用することでサービスメッセージを個人のスマホに送信できるような機能が可能になる。さらに倉庫や流通過程でのアセットのトラッキング、緊急応答、スマートシティなどにも導入できるという。こういったペアリングを必要としないブロードキャスティング機能により、Bluetoothの進化はまだまだ続くことになる。Bluetooth SIGは、現在すでに82億台のBluetooth機器が使われており、2020年までにIoTデバイスの1/3がBluetoothを搭載するだろうと期待している。

Bluetooth 5の機能をいち早くチップに集積できるようにIPベンダーのCEVAが開発ツール、RivieraWavesをリリースし、半導体メーカーに提供し始めている。CEVAはこれまでもBluetooth IPを10億個以上の半導体チップに提供してきた。すでに数社にこのツールをライセンス供与しており、シリコンの試作品を設計している所のようだ。このBluetooth IPプラットフォームは、ベースバンドコントローラのハードウエアと豊富なソフトウエアのプロトコルスタックを搭載している。


図1 3年前に来日した時のBluetooth SIGのErrett Kroeter氏

図1 3年前に来日した時のBluetooth SIGのErrett Kroeter氏


CEVAがBluetooth 5のIPプラットフォームをリリースしたことに対して、Bluetooth SIGのマーケティング担当バイスプレジデントのErrett Kroeter氏(図1)は、SIGメンバーがいち早くBluetooth 5開発ツールを提供したことで、世界中のカスタマが非常に短い期間でBluetooth 5のメリットを感じてくれるとして、手放しで喜んでいる。

(2016/06/17)

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