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Infineon、故障解析レポート期間短縮狙い、解析ラボを充実

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Infineon Technologiesが日本でのプレゼンスを高めている。Infineonはフィールドで不良品が生じた時にその原因を探るため解析し、10日〜2週間以内に回答するサービスを謳っている。このほどモールドをはがして解析するためのラボを都内にオープン、顧客への解析レポートを提出する期間の短縮を図っている。

図1 Infineonが開設した解析ラボ ここでは薬品も使える 出典:Infineon Technologies

図1 Infineonが開設した解析ラボ ここでは薬品も使える 出典:Infineon Technologies

顧客の信頼を勝ち取るために、何か問題が起きた時に素早く対応し、故障原因をいち早く解析して伝えることはビジネスとして基本中の基本。しかし、これがなかなか実行できない。悪い部分を隠したり、回答時期を伸ばしたりするようでは顧客の信頼を失ってしまう。Infineonはこれまでも顧客からの故障のクレームについて、第1弾は24時間以内に素早く回答することで信頼を勝ち取り、日本市場でシェアを伸ばしてきた。最初の回答の後、モールドを開けずに解析し2週間以内には最終回答することにクレーム品の60%は対応できていた。

フィールドから戻ってきた不良品に対しては電気的特性を測定、どこが悪いのかを推測、これまではX線透過装置や超音波装置などを通じて故障個所を特定・確認してきた。しかし、ボンディングワイヤーがオンオフ動作による熱ストレスでときどき触れ合うような不良のようにX線や超音波観察では答えを出せない故障モードに関しては、不良品を欧州に送り、解析を依頼していた。この場合には最終結果の報告はさらに遅れることになる。

今回は、化学薬品も取り扱えることのできる解析ラボを開設、ICのモールドパッケージを国内ではがすことができるようになったため、従来の60%の国内カバー解析率をもっと上げることができると自信を高めている。解析ラボは、現在日本法人の入っている高層ビルから徒歩6分のビルにある。薬液を使えるビルは限られており、日本法人オフィスの近くに探すことに苦労したという。

モールドをはがすのに硝酸や硫酸などの薬液を使うため、廃液は必ず中和し外へ排出する。また、スラリー廃液などはいったん溜めて産業廃棄物処理業者に渡す場合もある。InfineonはInternational Rectifier(IR)を買収したことで、元々IRジャパンが持っていたモールド除去装置を使っている。さらに高出力レーザーでモールドを溶かし除去する装置もある。薬液とレーザーを組み合わせて使うこともある。レーザーでモールド樹脂が薄くなるまで溶かし、薄皮になった状態で薬液処理することもあるという。開封する場合にはチップやボンディングワイヤーにストレスがかからないように顧客とディスカッションしながら使っていくとしている。

モールドをはがしても故障個所と原因が確認できない場合は、透過電子顕微鏡やFIB(Focused Ion Beam)加工による解析をしなければならない。このような高価な装置を利用する場合に欧州に送り、その場所で解析することになる。

Infineonがモールドまではがせる解析ラボを日本に設置し、顧客に対応していくのは、やはり自動車市場への売り上げを増やしたいという思惑がある。今回の解析ラボへの投資を含め、日本でのプレゼンスを上げ、攻めの経営を行うには財務的に健全でなければできない。最近発表のあった2015年度(2014年10月1日〜2015年9月30日)の決算では、売り上げは2014年度比34%増の5795億ユーロ、営業利益は897億ユーロ、営業利益率は15.5%を確保した。IR買収による売り上げの嵩上げは3四半期分である。

(2015/12/18)

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