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高速エミュレータからクルマOSまで拡大するMentor Graphics

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EDAベンダーのMentor GraphicsがLSI設計・検証のEDAから着実に手を広げている。欧州とアジアの記者が集まるEuroAsia 2015では、超高集積SoCの設計検証をエミュレートするエミュレータを仮想化し、配線をすっきりさせたVirtuaLAB(図1)や、クルマ用のEthernetでのマルチ画面伝送を可能にする SoC設計向けのConnected OSへと拡大している。

図1 Mentorの開発したVeloce 2 VirtuaLABエミュレータ 1台で10億ゲート分を処理可能 出典:Mentor Graphics

図1 Mentorの開発したVeloce 2 VirtuaLABエミュレータ 1台で10億ゲート分を処理可能 出典:Mentor Graphics


ネットワークプロセッサのように、10億ゲートを超えるような超大規模のLSIを設計し、検証する場合にかかる時間を短くするため、Mentorはハードウエアエミュレータを使っている。シミュレータなら1日1000パケット処理するとして、検証に2週間かかるが、エミュレータなら1日に110万パケット処理することに相当しわずか2分で終了する。昨年発表したVeloceは、エミュレータの一つ。今回のVeloce 2 VirtuaLAB Ethernetは、25Gbps,50Gbps、100Gbps、400Gbpsと高速のデータレートへと進んでいく、基盤ネットワークに必要なEthernetスイッチ超高集積ネットワークプロセッサ(図2)を検証できる。


図2 基地局やデータセンタ内にネットワークスイッチには15mm角、1.4億ゲートの超高集積のプロセッサが必要 20mm角、4億ゲートのチップも次に控えている 出典:Mentor Graphics

図2 基地局やデータセンタ内にネットワークスイッチには15mm角、1.4億ゲートの超高集積のプロセッサが必要 20mm角、4億ゲートのチップも次に控えている 出典:Mentor Graphics


ところが、高データレートのネットワークプロセッサをICE(インサーキットエミュレータ)手法でエミュレーションすると、配線のお化けのようになってしまう。このため、エミュレータ用に独自設計のLSIを開発、それを多数搭載したボードをスタックするコンピュータラックのエミュレータマシンを開発した。高速のシリアルインターフェースを駆使して配線本数を減らした。1台で10億ゲートのLSIをエミュレーションできる。

クルマのIVI用チップ開発ツールも 
クルマ用のEthernetに関しては、動画(ビデオ)を前席の運転手と助手席のモニターと、後部座席のモニター同時に楽しむことができるようにするため、ビデオ信号とオーディオ信号の同期をとることのできる仕組みを導入できるソフトウエアプラットフォームConnected OSをリリースした(図3)。これはLinuxベースのOSカーネルに、オーディオとビジュアルの信号処理コンポーネントである、Automotive Audio / Automotive Visualsを備え、さらに、標準規格であるGENIVIに準拠するライブラリも使え、高速起動ブートローダなどを備えたもの。


図3 Connected OSの仕組み カーネルにLinuxを用い、オーディオ・ビデオ処理コンポーネントを加えている 出典:Mentor Graphics

図3 Connected OSの仕組み カーネルにLinuxを用い、オーディオ・ビデオ処理コンポーネントを加えている 出典:Mentor Graphics


このConnected OSがあれば、Ethernetにデータを載せて配信するAVシステムを構築することが容易になる。もちろん、それを半導体チップに落とすためのSoC (System on chip:システムLSI)のサポートは欠かせない。「Connected OSはSoCベンダーと密接に関係を持ちながら開発を進めるもの」とMentor Graphics社Embedded Systems Division, Automotive Business Unit, Senior Product Marketing ManagerのAnil Khanna氏は述べている。 Connected OSでの実績として、ルネサスエレクトロニクスのクルマ用SoCの一つR-CARファミリのソフトウエアは、このConnected OSプラットフォームをベースに開発された、とKhanna氏は言う。同氏はさらに、ルネサス以外にも、Texas InstrumentsやIntelの名前も挙げた。実は、それぞれの半導体メーカーのSoCに合わせて、Connected OSプラットフォームでソフト開発を行っている。


図4 Connected OSを組み込んだMentorのハードウエア開発キット

図4 Connected OSを組み込んだMentorのハードウエア開発キット


半導体メーカーの各SoCに合わせて、このソフトウエアを生み込めるような、ハードの開発ボードも提供する(図4)。ルネサスやTIのSoC向けのボードでは、Connected OSの他に、クルマ用の標準規格AUTOSARやリアルタイムOSのNucleusも搭載している。Connected OSをLinuxでカーネルを構成したのは、クルマのIVI(In-Vehicle Infotainment)を中心とするジョブを行うため。Nucleus RTOSは、ダッシュボードの液晶メータなどの小さなジョブだけに使うという。

(2015/10/29)

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