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Intel、ADAS/自動運転市場に本格参入

Intelは、ロボットと自動運転車のベンチャーZMPに昨年5月に投資したが、このほど自動運転車市場に本格的に参入した。Core i7マイクロプロセッサを搭載した自動運転開発ツール「IZAC」をZMPが開発、販売することになった。ZMPは自動運転の研究開発プラットフォームにも力を入れており、自動運転のレベル4と最も困難なレベルに挑戦している。

図1 ZMP代表取締役の谷口恒氏(左)とインテル取締役副社長の宗像義恵氏(右)

図1 ZMP代表取締役の谷口恒氏(左)とインテル取締役副社長の宗像義恵氏(右)


Intelはこれまでマイクロプロセッサそのものに価値があるとして、プロセッサのアーキテクチャや機能、性能などを強調してきた。しかし、「今は、マイクロプロセッサの能力を使って、ユーザーの価値を高める、あるいは見出す時代に入った」と同社取締役副社長の宗像義恵氏(図1)は述べる。

だからこそ、マイクロプロセッサをクルマに使う場合の価値を提案している。Intelが自動運転クルマ事業で注力するのは次の三つの概念だ。一つは、Software-Defined Cockpit(統合コックピット)と名付けたダッシュボード、ADAS & Self-Driving(高度運転支援・自動運転)、そしてConnected Transportation & Logistics(コネクテッドカー、クラウド支援)である。いずれも演算リッチな応用であり、マイコンのように制御リッチなICでは実現が難しい。これらの分野でIntelチップの出番がある。

これからのクルマは、スタンドアローンではなく、インターネットとつながるようになる。そして高度なコンピュータを内蔵するようになる。かつてのパソコンはスタンドアローンだったが、インターネットにつながるようになり、今ではスタンドアローンは見かけなくなった、と宗像氏は述べる。そうなるとセキュリティが極めて重要になる。運転手がいる場合は、電気系統が故障しても、手動で運転できるようにクルマを設計しておけば済むが、自動運転車がハッキングされると制御不能に陥ってしまう。このため、クルマのセキュリティを、Intelアーキテクチャを使って実現し、その標準化技術を開発しよう、と先週サンフランシスコで開かれたIDF(Intel Developers Forum)2015で提案したという。


図2 Intelプロセッサはクルマにも広く使えそうだ

図2 Intelプロセッサはクルマにも広く使えそうだ


さらに、Intelのチップは、今やスケーラビリティに富んでおり、低消費電力用から高速用に渡って揃っている(図2)。低消費電力用にはAtomよりも消費電力の低いQuarkを使い、クラウドでビッグデータ解析などに使うハイエンドのXeonプロセッサとシームレスに揃えている。Intelはセキュリティをローエンドからハイエンドまでカバーしていくつもりだ。だからセキュリティがローエンドからハイエンドまで欠かせなくなる。

今回発表した、「IZAC(Intel ZMP Autonomous Computer)」(図3)は、IntelのCore i7プロセッサを使ったコンピュータボードである。自動運転では、センサからの情報を検出、物体を認識、衝突や危険レベルなどを判断し、クルマを「止める・曲がる・走る」の制御を行う。これから自動運転車を製造したいと思うユーザーが物体認識や衝突回避など自動運転に必要な技術を簡単に得ることができる。


図3 IntelのCore i7プロセッサを搭載した自動運転開発用コンピュータIZAC

図3 IntelのCore i7プロセッサを搭載した自動運転開発用コンピュータIZAC


ハードウエアだけではない。OSやリアルタイムOSなどのソフトウエア、認識や判断のアルゴリズムの開発など、ソフトウエア部品を搭載する必要がある。これまでZMPが自動運転向けに開発したソフトウエア部品に加え、ユーザーが開発したアルゴリズム部品も搭載できるようにしている。例えば、障害物回避やレーン検出、自律走行などのアルゴリズムを揃えている。ZMPはハードウエア、ソフトウエアを搭載したIZACプラットフォームを10月から発売する。基本パッケージはハードウエア、基本ソフトを含み350万円から。

(2015/08/27)
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