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モバイル加入契約数、続伸、今年中に世界人口を超えそう

スマートフォンや携帯電話の加入契約件数は2014年第1四半期時点で68億件(図1)、と世界の人口71億人に迫る勢いで増えている。世界の人口は間もなく72億人となるが、今年中にはモバイル加入契約数は人口を超えるに違いない。2014年第1四半期に新規にモバイルに加入した件数は1億2000万件になり、通年では単純に4倍にしても4億8000万件にもなるからだ。

図1 2014年第1四半期時点での加入68億件の地域別内訳 出典:Ericsson

図1 2014年第1四半期時点での加入68億件の地域別内訳 出典:Ericsson


この調査はスウェーデンの通信機器メーカーEricssonが明らかにしたもので、モバイル加入件数は2019年末には92億件にまで増加していく、と予測する。その内の80%以上がモバイルブロードバンドを利用するとしている。これらの数字にはM2M(machine to machine)データ通信モジュールの加入件数は含んでいない。しかし、この件数にはプリペイドのモバイル端末も含んでいるため、実際のモバイル端末の所有者よりも多い。

ここではモバイル端末を、携帯電話機、スマホ、タブレット、モバイルPC、モバイルルータなどと想定している。モバイル端末の内、スマホの加入契約数は2013年で19億件、2014年には26億件になると見ている(図2)。またタブレットやモバイルPC、モバイルルータの加入契約数は2013年に3億件に達し、2014年は3億5000万件になる。68億件から約(19億+3億)を引いた残りはいわゆる普通の携帯電話、すなわちフィーチャーフォン(日本ではガラケーと呼ばれる)である。


図2 スマホの加入件数は今年26億件に 出典:Ericsson

図2 スマホの加入件数は今年26億件に 出典:Ericsson


スマホの加入件数は毎年増加し、2019年末には56億件に達すると予想している。同様にタブレットとモバイルPC、モバイルルータは7億件に増加すると見ている。

技術的にはLTE(Long Term Evolution)が伸びるとする。図3のLTEには、3GやHSPAなどのモデムも搭載されたモバイル端末を含んでいる。世界的には、GSM/EDGEのみの2Gの加入件数は減少していくが、3GであるWCDMA/HSPAは今後も伸び続けていくと見る。


図3 LTEだけではなく3Gもまだ伸びていく 出典:Ericsson

図3 LTEだけではなく3Gもまだ伸びていく 出典:Ericsson


LTE技術は今後、キャリアアグリゲーション技術を使ってデータレートを速くするLTE-Advancedや、音声もデータ通信で通信するVoLTE(ボルテと発音)、さらにはテレビのように放送するLTEブロードキャストなどへと進展を続ける。キャリアアグリゲーションは周波数帯域を束ねてデータレートを上げる方法。KDDIが2014年6月に10MHz帯域でサービスを始めており、下りのデータレートは最大150Mbpsになる。ただし、NTTドコモは1.7GHzの周波数で帯域20MHzを利用しているため、データレートはKDDIのキャリアアグリゲーションと同等である。LTEが本格化すると、20MHzの帯域を二つあるいは三つ束ねるアグリゲーションによって、最大300Mbpsあるは450Mbpsのデータレートを実現できるようになる。

現在のLTE端末では、音声通話が3G、データ通信はLTEという複数のモデムを使っているモデルが多いが、NTTドコモは6月から音声もデータ通信、すなわちIP電話化するVoLTEサービスを始めた。VoLTEは2012年に韓国の通信オペレータ3社が始めていたが、この5月から北米や香港、シンガポールでも始まっており、VoLTEは今後さらに普及していく。

また、LTEブロードキャストは韓国と北米で今年、試験運用に成功している。今後、LTEを利用してテレビやスポーツ中継などのコンテンツを配信するために提供者・開発者・デバイスメーカーの協力が必要となろう。

LTEはM2Mにも導入されていく。デジタルサイネージをはじめとしてビデオ利用のM2Mでは、LTEのような高速技術は欠かせないが、電力・水道・ガスなどのメータや車両のトラッキングなど高速性を必要としない用途にもLTEが使われる、とエリクソン・ジャパンCTO(Chief Technology Officer)の藤岡雅宜氏は言う。この場合には、帯域を20MHzではなく、もっと狭くしてデータレートを下げて多数のデバイス (例えばIoT) が使えるようにする。LTEの規格で最も狭い帯域として1.4MHzがある。


図4 トラフィックが急増 2014年第1四半期だけで2011年の総量を超えた 出典:Ericsson

図4 トラフィックが急増 2014年第1四半期だけで2011年の総量を超えた 出典:Ericsson


一般にLTEはデータレートを上げる技術であるため、通信トラフィックは増大する。最近でも2014年第1四半期におけるモバイルトラフィック量は、2011年の総量を超えた(図4)。1ヵ月当たりのトラフィックは2019年末には、2013年の10倍の20 EB(エクサバイト)に膨れ上がると予測されている。このうち、スマホのトラフィックは毎月12 EBに達すると見る。トラフィックのアプリケーションとしてはビデオが半数以上を占めるという。端末のスクリーンの解像度が2K、4Kなどと上がることもデータレートの高速化を後押しするとともにトラフィックの増加を招く。

トラフィックの増加に対して、通信インフラであるネットワークでは、データレートを高めるだけではなく、データレートを落とさない工夫も必要になってくる。トラフィックの増大を緩和する策の一つとしてスモールセルやWi-Fi利用など異なるネットワークを導入する手はあるが、これらヘテロネットワークとのシームレスな統合が必要になる。


図5 セル間の協調によってデータレートを確保 出典:Ericsson

図5 セル間の協調によってデータレートを確保 出典:Ericsson


特に、マクロセル(基地局)とスモールセル(3GやLTE、Wi-Fi、Wi-MAXなどを利用)との協調が重要になるという。例えば基地局と基地局の範囲の境界に近い場所にスモールセルをただ単に設置してもデータレートは上がらない。これまで、基地局とスモールセルとの境界で端末がスモールセルを検知すると、スモールセルの信号がたとえ低くてもスモールセルに切り替えてしまう。このためデータレートはかえって下がってしまった。これを防ぐためには、セル同士の協調が必要になる。これは、スペクトルの追加や再構成、HSPAにLTEを追加したりすることで、統合するというもの。これによりキャリアアグリゲーションが可能になる上に、移動中のハンドオーバーも必要なくなる。互いに干渉を防ぐための仕組みが導入される。

(2014/07/03)
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