セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

世界的には成長するも停滞する日本市場に苦戦−台湾eMemoryの例

|

半導体産業は、世界中が伸び日本だけが成長していないという現実が突きつけられている。例えば、不揮発性メモリIPベンダーの台湾eMemory社は、日本でのビジネスに苦戦している。しかし同社のメモリIPを集積したシリコンウェーハは、世界市場では2013年だけで8インチで200万枚を超え、累計で730万枚を突破した。

図1 eMemoryの不揮発性メモリIPを集積したウェーハの累積出荷 8インチウェーハでの数字 出典:eMemory

図1 eMemoryの不揮発性メモリIPを集積したウェーハの累積出荷 8インチウェーハでの数字 出典:eMemory


eMemoryは日本以外の国ではビジネスが成功しているが、日本ではうまく行っていないという。同社の顧客は、台湾では196社、中国では232社、韓国でも40社、北米では118社、欧州では67社いる。しかし日本は30社と最も少ない(図2)。それも同社が対象とする顧客はファブレス半導体とデザインハウスが多い。世界中で、ファブレス企業と比べファウンドリの数は圧倒的に少ない。日本の顧客30社の内、ファブレスとデザインハウスは20社だが、IDM8社、ファウンドリ2社となっている。

図2 eMemoryが持つ、世界の顧客実績 出典:eMemory

図2 eMemoryが持つ、世界の顧客実績 出典:eMemory


同社は、不揮発性メモリのOTP(one time program)とMTP(multi-time program)、フラッシュ、EEPROMなど各方式のメモリ用IPを設計しているIPベンダーだ。メモリ容量は4Kビットという小容量から4Mビットの中容量まで揃えている。1回しか書けないOTPから数万回書き換えられるフラッシュやEEPROMまでの製品構成を図3にまとめている。同社のビジネスモデルは、英国のARMと同様、IPをファブレス半導体メーカーやIDM、ファウンドリなどにライセンス供与し、そのIPを集積したチップが量産されるようになるとロイヤルティ料を徴収するもの。さらに、IPユーザーからマクロ設計を請け負うデザインハウスのビジネスも行っている。


図3 不揮発性メモリIPの応用範囲 出典:eMemory

図3 不揮発性メモリIPの応用範囲 出典:eMemory


メモリ容量と不揮発性という点で、応用を見ていく。まずはトリミングだ。アナログ回路やミクストシグナル回路では微調整を抵抗などのトリミングで行っているが、その抵抗値をA-D変換してデジタルメモリとして格納しておく。微妙な経時変化などで抵抗値が変わると、メモリからデータを取り出して補正することができる。

次はチップのID(identification)である。チップが製造される工場やラインの番号、ロット番号、日付、製品番号、品名などをごくわずかな領域にIDとして、ボンディングパッド間などの隙間に集積しておく。海外では、半導体製品の捺印を別の製品名に書き換えて売るという詐欺事件が多発しておりこれに対処するため、チップそのものにID番号を書き込んでしまうものである。このIDを外部から読みとるようにしておけば、偽物か本物かを見分けることができる。

ビデオ処理回路などでは、色補正などのパラメータ設定が不可欠である。色の階調制御などの変換テーブルを格納する。また、RGB色データと、ディスプレイに表示されるデータとの違いを補正するガンマ補正などのパラメータを設定するのに使う。その他、暗号回路などのセキュリティキーを保存したり、チップの機能を切り替えたり、簡単なコードを記録するといった用途がある。

スマートフォンに使われる場合の例も提示している。タッチパネルコントローラや、モデムチップ、LCDドライバ、カメラモジュール、パワーマネージメント、NFC、電池の残量計、MEMSセンサ、光センサなどにも使う。

不揮発性メモリIPベンダーは、eMemoryだけではない。米国のKilopassやカナダのSidenseなどがいる。eMemoryの特長は、不揮発性メモリIPを集積した半導体チップのソリューションをワンストップで提供することだ。プロセスもフローティングゲートや、アンチフューズ、SONOSなど各種揃え、28nmから0.5µmまでの幅広いデザインに対応する。契約しているファウンドリは17社おり、680種類以上のIPを690社以上のカスタマに提供しているという。日本の半導体産業が以前のように活発になれば、IPベンダーにもチャンスが出てくる。

(2014/04/01)

月別アーカイブ