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スマホ後発組でも勝負できる−新日本無線がMEMSマイクを1億個/年出荷

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アナログ半導体メーカーの新日本無線(NJR)が2013年3月から2014年2月までの1年間でMEMSマイクロフォンの出荷1億個を達成した。MEMSマイクではKnowles(ノウルズ)社という最大手がいる中で、2013年3月に量産化して以来の快挙といえる。

NJRはもともとローノイズアンプをはじめとするアナログに強い半導体メーカーであるが、これからも伸びるスマートフォン/タブレットというモバイル端末市場に向け、MEMSマイクを量産している。モバイル端末は、低コスト化が追求される分野であるが、従来のECM(エレクトレットコンデンサマイク)は耐熱性が低いため、リフローハンダに耐えられなかった。このため手作業でハンダ付けせざるを得ない。生産性が悪くコストアップ要因になっていた。これに対してMEMSマイクはシリコン半導体をベースにしているため、230〜260℃のリフローにも耐えられる。プリント板への実装は他の半導体チップや受動部品とも同時にリフローハンダができるため、生産性は格段に上がる。

加えて、MEMSマイクはECMよりも小さいため、2個以上スマホに搭載できる。マイクを複数搭載できれば、ノイズをキャンセルでき、通話が聞き取りやすくなる。最近ではiPhoneのsiriに見られるように音声認識技術が一般的に使われるようになってきているため、認識率を今よりも上げたいという要求が強い。周囲の雑音を打ち消すことができれば音声の認識率はさらに高まる。


図1 生産能力を月産2000万個に拡充 出典:新日本無線

図1 生産能力を月産2000万個に拡充 出典:新日本無線


NJRが年間1億個を達成したとしても、MEMSマイクの潜在市場は30億個/年と言われており、市場シェアはたかだか3%にすぎない。同社は量産体制を構築し、これからも増産していく(図1)。昨年の3月に量産を始めた時は500万個/月体制だった。同年7月にはラインを増やして1000万個/月に上げ、さらに10月にはUMCの8インチMEMSラインを使う契約を結び、2000万個/月の生産能力を構築した。ただし、MEMSチップの生産数量は能力いっぱいには達していない。まだ1500万個/月だという。


図2 新日本無線取締役執行役員の村田隆明氏

図2 新日本無線取締役執行役員の村田隆明氏


同社は後発組なのになぜ勝負できるのか。スマホ市場の拡大は言うまでもないが、MEMSチップと後段のアナログアンプの特性を揃えることができるという特長があるからだ、と同社取締役執行役員の村田隆明氏(図2)は言う。例えば、MEMS感度をアンプのゲインを変えて調整できる。同社はMEMSチップ単体でも、その出力を増幅するアンプICとセットでも販売する。直接の顧客はマイクロフォンメーカーであり、顧客がMEMSチップとアンプチップをCANなどのモジュールパッケージに実装する。新日本無線はチップを提供する。

提供するアンプには、増幅機能の他に、MEMSマイクに印加する昇圧回路やレギュレータも集積している。図3の下部の回路は開発中のデジタル出力のICで、2014年度の早い時期に製品化するという。センサ信号を増幅した後、ΔΣコンバータでA-D変換しデジタルで出力する。アンプICはCMOSプロセスで製造するが、その理由はこなれた抵コストのプロセスだからだとしている。


図3 MEMSマイクとセットのアンプIC 出典:新日本無線

図3 MEMSマイクとセットのアンプIC 出典:新日本無線


MEMSそのものも次の製品を開発中で、現在の1.3mm角のMEMSチップをさらに1.1mm角に小型化する。小型化しても感度を確保するため、MEMSで作るメンブレンの振動のさせ方に工夫を凝らし、静電容量の変化分を大きくしているという。これも2014年度に出荷する予定だ。小型にするのは、より低コストに対応するため。

(2014/03/14)

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