UMCと新日本無線、プロセスの共同開発でローノイズアンプを製品化
台湾ファウンドリのUMCと国内アナログに強い新日本無線(NJR)が、ファブレスとファウンドリの関係を超えたコラボレーションを強めている(図1)。共同で製品プロセスのプラットフォーム化を進めると同時に、オペアンプ製品の消費電力を下げながらノイズ(1/fとホワイト)を抑えるプロセスを開発した。
図1 UMCと新日本無線との共同会見 中央はUMC グループジャパンの代表取締役社長、張仁治氏、右は新日本無線取締役執行役員の村田隆明氏
NJRは、1999年ころからUMCをファウンドリとして利用してきた。しかし2006年ころからカスタマイズを含む、より深いコラボレーションという関係を結んだ(図2)。ただ、従来は製品ごとにカスタマイズするという協力関係であったが、最近は製品ごとではなく製品プラットフォームとして共同開発するようになった。
図2 UMCとNJRのコラボにPDK(プロセス開発キット)は不要 デバイス構造やプロセス、設計環境を共同で開発している 出典:UMC/新日本無線
今回は、アナログCMOSプロセスを利用するオペアンプ製品NJU77806の共同開発事例を明らかにした。NJRによれば、従来のオペアンプのノイズ特性では、周波数が1kHzを割るあたりから1/fノイズが顕著に表れたが、UMCのプロセス技術の改良により、1/fノイズを1/3〜1/4に減らすことができた(図3)。1KHz以上の周波数では、熱雑音(ホワイトノイズ)が効いてくるが、これはNJRの回路設計技術で1/3に落とすことができた。
図3 1/fノイズと熱雑音をプロセス、回路でそれぞれ削減 出典:UMC/新日本無線
一般的にはノイズを減らすと入力インピーダンスが上がりやすくなるため、電磁波ノイズなどの影響を受けやすくなる。コラボレーションによって、最適なプロセス条件を求めることができ、今回のオペアンプ製品のリリースにつながった。また、一般にノイズは電流をたくさん流すことで減る傾向がある。しかし、この製品は消費電流を抑えることができ、1kHzの周波数でノイズ電圧5.5nV/√Hzと低く、消費電流も500µAと低い。
コラボレーションの結果、複数のプラットフォームができ、50種類の製品を開発できたとNJRは言う。さらにUMCと一緒に開発中の製品は30近くにも上るとしている。NJRは単なるファウンドリなら、こういったプロセス開発はできないため、このパートナーシップを大事にしたいと考えている。
このローノイズオペアンプはさまざまなセンサからの出力信号を増幅するのに最適。今後、市場拡大が期待できるIoT(Internet of Things)やワイヤレスセンサネットワークなどのセンサ出力回路に使える。NJRはこれまでもアナログオペアンプやパワーマネジメントICなどを製品化してきたが、UMCのレシピを使い、今後の成長分野へ製品を伸ばしていけると見ている。両社の関係は独占契約ではないとしている。