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SiC専門のファウンドリ、Raytheon UKが事業戦略を明らかに

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SiC専門のファウンドリが英国スコットランドに2013年1月誕生した。米国の防衛エレクトロニクスの専門メーカーであるRaytheon社の英国法人、Raytheon UKは、このほどSiCファウンドリの事業戦略を明らかにした。

図1 英国スコットランドのグレンローゼズに工場を持つ 出典:Raytheon UK

図1 英国スコットランドのグレンローゼズに工場を持つ 出典:Raytheon UK


SiCはエネルギーバンドギャップが広く、また絶縁耐圧が高いことから高温動作可能で、高耐圧・低オン抵抗が可能なパワー素子を製造できる。このため日本ではSiCパワートランジスタの製品化が活発に行われている。Raytheon(レイセオン)UKのファウンドリビジネスではパワートランジスタだけではなく、アナログやミクストシグナルICも含み、高温の劣悪環境で動作する機器に向けたSiCデバイスも視野に入れている。同社は、自動車はもちろん、宇宙・航空、地熱探査、石油・ガスのエネルギーなどの応用分野を想定している。

親会社であるRaytheonは、もともと米国のDoD(国防総省)と関係の深い企業であり、宇宙航空・防衛・工業分野に強い。従業員6万8000人、2012年の連結売上額240億ドル(2兆4000億円)という規模の企業である。この英国法人であるRaytheon UK(従業員500名以上)は、SiC製造に設備投資して10年、これまでSiCのプロセス開発に力を入れてきた。親会社からの注文を受け、これまでは社内向けのSiCチップ(図2)を製造してきた。量産実績に自信を付けてきたため、今年の1月にファウンドリとして一般市場にも開放することになった。


図2 半透明なSiプロセスウェーハ 出典:Raytheon UK

図2 半透明なSiプロセスウェーハ 出典:Raytheon UK


技術的には、SiC基板上にpn接合を形成する経験を積んできており、大手ユーザーから品質を認定されたという。すでにISO/TS 16949:2009とAutomotive Standardを取得している。だからこそ、パワー半導体だけではなく、pn接合をフル活用するCMOS IC、それも高温の劣悪環境で動作するミクストシグナル回路も製造する。センサとパワートランジスタの組み合わせや、センサからアナログ、ドライバ段からパワーとの組み合わせなどをセットにして使うという用途でSiC半導体が生きてくる。

この工場で現在製造しているSiCデバイスは、MOSFET、バイポーラトランジスタ、ショットキダイオード、RF MESFET、パワーおよび小信号JFETなど。プロセス装置としては、リソグラフィ(1μm以上)、ウェットおよびドライエッチング、1800℃までの拡散炉・アニール炉、N2Oガスなどを含む1200℃までの酸化炉、RTA、メタライゼーションなどの装置を持つ。イオン打ち込みにはP・N・Alのイオンを扱い、室温から600℃の温度で行う。検査装置では、4kV・40Aのパルス印加、および最大2kVを印加できるウェーハプローバなどを備えている。

日本に対しては、大きな自動車市場があると見るが、自動車向けだけではなく、ミクストシグナルASIC向けも狙えるとしている。

実際に試作した回路はまだ、分周器や簡単なロジック回路を形成したICにとどまっているが、アナログ計装アンプやパワートランジスタのドライブ段、さらにLSIやASICへとロードマップを描いている(図3)。


図3 SiC CMOS半導体の製品ロードマップ 出典:Raytheon UK

図3 SiC CMOS半導体の製品ロードマップ 出典:Raytheon UK


(2013/10/10)

*追加情報

Raytheon UKから以下のような情報が送られてきました:
・SiCウェーハサイズ:4インチ
・生産能力:2,500枚/月
・6インチ化の予定:2015年後半
・生産している製品の品目:パワー半導体がほとんど。最初のデジタルIC+アナログIC製品はサンプル出荷中、2014年に量産予定

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