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Freescaleとロームが絶妙のコラボ製品を車載市場向けに提供

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Freescale Semiconductorとロームが製品を補完し合い、車載向けプラットフォームを共同で提供し始めた。Freescaleはi.MX6プロセッサ、ロームはそのプロセッサに供給する電源用ICを一つのリファレンスボードに搭載、設計ツールとして車載メーカーに提供する。

図1 OGT(One Great Team)という意味の1を指差す両チーム

図1 OGT(One Great Team)という意味の1を指差す両チーム 
左2名がFreescale、右2名はローム


Freescaleのi.MX6プロセッサはARMのCortex-A9コアをベースに2個、4個とマルチコアに対応し、さらにビデオコーデックやグラフィックスコアも集積したSoCチップである。

今回、共同開発したボードはFreescaleが自動車のインフォテインメント向けにSABRE(Smart Application Blueprint for Rapid Engineering)for Automotive Infotainmentと呼ぶ開発リファレンスツール(図2)。ディスプレイとコネクティビティを備えたスマートデバイス(スマートフォンやタブレットを含む)向けのリファレンスボードを同社はSABREと呼び、それをベースに自動車用に開発した。

今回のボードでは発熱するSoCやパワーアンプなどの熱設計をアナログやパワーに強いロームが担当し、熱を分散させるような設計を行った。ロームのLSI商品戦略本部 LSI商品戦略ユニット車載担当部長の末永良明氏によると、ロームはLDO(Low Drop Out)60種、スイッチングレギュレータ40種を製品化しておりパワーマネジメント分野に強い。Freescaleはプロセッサが強い。お互い強い者同士が手を結ぶことで、どこにも負けない自動車用のリファレンスボードを開発したという訳だ。


図2 i.MX6プロセッサカードを両社で開発 出典:Freescaleとローム

図2 i.MX6プロセッサカードを両社で開発 出典:Freescaleとローム


自動車向けのボードでは電源周りも重要になってくる。最近のクルマはバッテリオフ時の消費電力も無視できなくなってきた。例えばキーレスエントリーシステムではキー入力電波をいつでも受け取れるようにスリープモードながらオンしている。エンジンを止めていても動作しているECUが多く、消費電流は少しでも減らさなければならない。もちろん、電源用IC自身の消費電力も減らす。今回のボードは、放熱をレイアウトの工夫によって分散させ、電源周りの配線の自由度が増したという。

i.MX6では、DDRメモリインタフェースやSATAフラッシュインタフェース、カメラ用インタフェース、HDMI出力、GPS用µPCIe、USB/Ethernet/CANインタフェースなどの電源電圧には0.75V、1.8V、1.5V、1.375V、0.95V、3V、5V、1.2V、2.8Vなど様々あり、これらを一つの電池や電源から全て作り出さなくてはならない(図3)。しかし、優れた電源回路設計を使えば、必要な電源数を減らすことができる。このことはプロセッサ、電源回路共にメリットになる。図2の回路に使う電源を最小構成で組むと、電源の数は電流容量の違いも含め10種類が6種類で済むようになったという。


図3 基本的な10種類の電源構成 最小構成にすると6種類の電源で済むという 出典:Freescaleとローム

図3 基本的な10種類の電源構成 最小構成にすると6種類の電源で済むという
出典:Freescaleとローム


装置を小型化したい顧客は、LDOよりもスイッチングレギュレータを必要とする。その周りに使う部品を決めるためにもこういったリファレンスボードは必要となる。車載用では、通信モジュールやADAS(Advanced Driver Assistance System)モジュールなどにこのリファレンスボードを使う。

今回のコラボは、今年の1月の賀詞交歓会で初めて両社が会い、何か一緒にコラボできないかと接点を探っていった結果、生まれたという。Freescale、ロームともに共同で開発したリファレンスボードができるまで10カ月足らずでこぎつけた。両社のディシジョンは早い。今後も様々なプロジェクトをさらに一緒に進めていきたいという。Freescaleは日本の車載市場を狙い、ロームはグローバル市場を狙える。日米の協力によって、両社はウィン-ウィンの関係にある。

(2013/09/18)

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