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欧州は100億ユーロ計画、米国は450mmを本格化、先端半導体開発を推進

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欧州が100億ユーロの半導体開発プロジェクトを発表、米国VLSI Researchは450mmウェーハの装置開発が300mmの時よりもずっと少ない金額で開発できるというレポートを発表した。英国からも電子産業を主力産業に育てようというレポートが出た。先端半導体の開発計画が欧米で活発になっている。

100億ユーロ(約1兆3000億円)プロジェクトは、EC(欧州委員会)がアナウンスしたもので、半導体チップ開発に必要な技術を開発する。2020年までに、欧州半導体企業の世界シェア20%を目指す(参考資料1)。

欧州での半導体産業は、成長産業であり、雇用を生み出すための有力な産業と位置付けられている。半導体はKET(Key Enabling Technology:実現可能にする重要な技術)であるとECは見ている。ECが主導して100億ユーロを予算化する。70%を参加各国政府あるいは各国内の地方自治体が、残りの30%をEU(欧州連合)が拠出するという計画である。

研究開発の拠点となるのは、半導体産業が集積しているドイツのドレスデン地区、オランダのアイントホーベン/ベルギーのリューベン地区、そしてフランスのグルノーブル地区である。これらと英国ケンブリッジ、オーストリアのカリンティア、アイルランドのダブリン、イタリアのミラノのような半導体産業地域を結ぶ。

基本計画は、チップをより安く作るための450mmウェーハ化、チップの高速化(More Moore)、チップの高機能化(More than Moore)に注力する。民間、地方自治体、国政府、そしてEUからの資金を元に、共通の目標を設定し研究とイノベーションを生み出すとしている。この計画はHorizon2020と呼ばれ、7年間パートナーシップを組む。

成功した暁には、半導体製品を欧州の重要な産業に使えるようになり、サプライチェーンとエコシステムを拡張し中小企業にビジネス機会を提供する。このサプライチェーンを通したイノベーションを活性化することで欧州産業の競争力を高められると見ている。


図1 英国ESCOレポートを提案した主力メンバー 出典:Silicon South West Newsletter

図1 英国ESCOレポートを提案した主力メンバー 出典:Silicon South West Newsletter


英国でも、エレクトロニクス産業のリーダーたちが、その産業を2020年までに現在の55%増に相当する1200億ポンド(約18兆円)に伸ばし、15万人という優秀な人材の雇用を創出するための戦略を発表した(参考資料2)。このレポート、ESCO(Electronics Systems: Challenges and Opportunities)はエレクトロニクス産業をどのようにして英国の主要産業に育てていくかを示しているという。このレポートは英国BIS省(ビジネス・イノベーション・スキル省:日本の経済産業省に相当)がエレクトロニクス業界(図1)に要請して作成された。

米国では、市場調査会社のVLSIresearchが、450mmシリコンウェーハ対応の製造装置の開発コストは300mmの時よりもずっと安いというレポートをまとめた(参考資料3)。同社代表のDan Hutcheson氏は、200mmから300mmへ移行するために装置開発をしていた1998年、開発が止まってしまったとする。原因の一つはアジアの通貨危機で、モトローラは300mmプロセス開発人員をアサインし直した。リソグラフィ装置トップのキヤノンは300mm開発に参加していたが、ASMLとニコンは300mm開発ではなく193nm開発に注力した。この結果、キヤノンは193nmツールで7世代も遅れたという。

さらにこのレポートは当時の様子を伝えている。1998年4月には東芝、NEC、日立製作所は300mmについて話し合ったものの資金がないことを言わなかった。同年6月までに日本は300mmをやめ400mmへスキップすることを話し合い始めた。アプライドマテリアルズと東京エレクトロンは300mm装置の在庫が12億ドルもたまっており、300mm計画の延期もしくは設計見直しのため装置はスクラップになりそうになった。アプライドはI300Iプロジェクト(米国の300mm計画)から引き上げると暗にほのめかした。300mm計画時期を変更することを望んでいなかったためだ。300mmでプロジェクトが停滞したためにその装置開発には120億ドルもかかったとHutcheson氏は分析する。

これに対して、450mmでは300mmの轍を踏まないようにすれば、開発コストは80億ドル強で済むという。450mmウェーハ装置開発は2012年まではゆっくりとした足取りだが、2013年から立ち上がると見込んでいる。その一つとして本日7月4日の日本経済新聞はニコンが450mmをG450Cから受注したと伝えた。


参考資料
1. "Commission Proposes New European Industrial Strategy for Electronics – Better Targeted Support to Mobilise €100 Billion in New Private Investments," EC Press release, Brussels, 23 May, 2013.
2. "New Electronics Systems Group goes for national growth," Silicon South Westニューズレター、2013年7月2日号
3. Dan Hutcheson,"The 450mm Semiconductor Wafer Size Transition Contrasted to Prior Generations," VLSIresearch, April 30, 2013.

(2013/07/04)

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