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Alteraが高効率電源メーカーEnpirionを買収した理由とは?

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Altera(アルテラ)社が電源メーカーのEnpirion(エンピリオン)社を買収したと発表した。FPGAメーカーであるAlteraがなぜ電源メーカーを買収したのか。一見関係のないように見えるこの提携は、28nmや20nmといった最先端の微細なLSIを正常に動作させるために電源がカギを握ること、ソリューションビジネスが重要になってきたことと深く関係する。

微細化が進み、動作電圧が下がってくると、高集積回路に流れる動作電流はA(アンペア)規模になってくるため、ノイズを生じやすい。また、電源電圧を管理する幅が小さくなりマージンが少なくなる。システムとしての回路は誤動作する恐れがある。特に28nm以下のようなFPGAが並ぶようなシステムでは、ボード設計通りに動かないことは珍しくない。あるユーザから回路が動かないというクレームをFPGAメーカーが受け、電源を変えたら動いた、という逸話に事欠かない。FPGAを使う場合は通常、POL(point of load)と呼ばれる低電圧・大電流の電源をFPGAの近くに配置することが多い。電源線に一度に何Aもの電流が流れて、基板の他の電源線や信号線も引きずられる恐れがあるため、できるだけ負荷(FPGA)のそばに置き、大電流を負荷だけで消費してしまいたい。これがPOL電源の基本的な考えである。

また、FPGAやマイコンなどを載せたプリント配線板(PCB)では電源をオンする手順(シーケンス)がシステムによって異なる。このため、どのような電源でも使えるという訳ではない。DC-DCコンバータなどの電源のスペックには定格値しか載っていない。電圧の立ち上がり、降下、それらのタイミングは、過渡応答に敏感であるが、そのスペックまでは規定されていないことが多い。通常は入力電圧範囲、出力電圧範囲、定格電流、使用温度範囲などに限られている。だから、ボード設計では、電源系を上手に組むことが容易ではない。終端をはじめ、ノイズを出さない・受けない調整が多い。電源メーカーは電源だけを売るが、部品のバラつきが多く、サイズも十分小さくない、とアルテラは言う。

一方で、電源システムをシステムメーカーは、たかが電源と見る向きが多いらしい。電源そのものに関心を示さない。システム設計に集中するためだ。そこで、FPGAメーカーは特定の電源製品を推奨することが多いという。いわば、FPGAと電源をセットにしてソリューションビジネスを展開している。

Alteraが推奨するDC-DCコンバータメーカーの一つがEnpirionのPOL製品だ。Enpirionの特長は、実装面積が小さいこと。POL電源をモジュールにして提供するところが多いが、同社のモジュールはほぼ1パッケージに収めており、従来のモジュールの1/4〜1/6のサイズだという。


図1 EnpirionのDC-DCコンバータ 出典:Altera

図1 EnpirionのDC-DCコンバータ 出典:Altera


同社の最新の製品EN2300ファミリーは、出力電流が4A、6A、9A、15Aの品種を持っている。それぞれ、2個のパワーMOSFET、MEMSを利用したインダクタ(コイル)、PWC制御のフィードバックコントローラ、チップコンデンサなどが1パッケージに入っている。サイズが最も大きなモジュールパッケージでさえ、12mm×13mm×3mmしかなく、4.5〜14Vの入力電圧に対して、0.6〜3.3Vの出力電圧を提供する。効率は最大94%で、空冷もヒートシンクも必要ないという。最大15A製品は、親子構成のトポロジーを組み3個の子モジュールを接続すると最大60Aまで供給できる。

MOSFETはプレーナ構造を採りながら、オン抵抗と内部インダクタンスの削減を図ると同時に、MOSFETのゲート寄生容量、ボディダイオードのリカバリ損失、ゲートドライブ損失を低減している。例えば、パワーMOSFETの内部インダクタンスは長いゲート長Wに含まれるが、その配線のループを小さくするようなレイアウトを採用しているという。こういった技術でMOSFETの高速動作を可能にし、インダクタンスの影響を小さくすることに成功した。

パワーMOSFETは耐圧20Vの0.18μmプロセスのLDMOS構造を使った。縦型のVMOSや0.25μmのパワーMOSFETと比べ、高周波特性が良く、損失が少ないとしている。GaNは高耐圧には向くが、20V程度だとワイドギャップが仇になり、直列抵抗が大きく不利となる。

インダクタは磁気エネルギーを閉じ込めるという役割を持つが、磁性体のコア材料を検討し、さらにMEMS構造を利用して磁気エネルギー密度を20%上げ、コア損失を減らした。さらにインダクタの直列抵抗も減らしたという。

実装上も工夫している。チップを搭載するリードフレームにはやや厚めの銅を用いているが、これも大電流を流す場合の問題として、表皮効果と直列抵抗とのバランスが重要だと同社のビデオで述べている。

Enpirionの電源を国内で扱っているベルニクス社によると、Enpirionの製品はシリコンをベースに低コストで作製しながら性能が良い製品だという。ベルニクスは、Enpirionの販売代理店であると同時にDC-DCコンバータ、POL電源のメーカーでもあるため、Enpirion POL電源のサポートまで行っている。それも品質管理に組み込み、抜き取り検査でAQL(acceptable quality level)レベル値をユーザに伝えている。Enpirionはファブレス企業であるため、何かトラブルが生じると、ベルニクスが解析しその結果を報告しているという。今回のAlteraによるEnpirionの買収によって、ベルニクスのサポート体制がどうなるかについて、これから詰めていくようだ。


図2 Enpirion製品は一つの事業部門に 出典:Altera

図2 Enpirion製品は一つの事業部門に 出典:Altera


Alteraは、Enpirionを買収したあと、その製品のブランドを残す方針だ(図2)。事業部門として、MAX、Cyclone、Aria、Stratixの各FPGAシリーズと同列にEnpirion部門という位置付けになる。Alteraは今後、FPGAとPOL電源をセット売りしていく。ただし、Alteraもファブレスで、かつ電源のエキスパートではないため、電源の国内技術サポートを従来通りベルニクスに残すのではないかと見るのが自然だろう。

(2013/05/17)

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