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富士通セミコンダクター、ARMコアに全面シフト、海外売上増加を狙う

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富士通セミコンダクターはマイコン(マイクロコントローラ)をこれまでのオリジナルCPUコアからARMのCortex-Mシリーズコアへとシフトしていく。もともとARMのCortex-M3コアを集積したマイコンを出してきていたが、さらに強化する。同社のマイコン応用分野は自動車、産業機器、白物家電、AV機器、その他の民生機器に及び、総じて民生の比率が高い。

民生は国内市場が主であったため、売り上げをさらに増やそうとすると海外を伸ばすしかない。オリジナルコアだと海外での開発ツールをサポートしにくい。民生分野での海外売り上げ比率はまだ20%しかない。これをもっと上げていきたい、と富士通セミコンは考えた。そこでARMのエコシステムに目を付けた。ARMのエコシステムなら、開発ツールのサポートやソフトウエア開発、デバッグなどCortex-Mシリーズに合ったツールを、そのまま利用できる。海外顧客の注文を受けても海外サードパーティにソフト開発やデバッグなどを依頼できる。同社マイコン事業部長の寺本俊幸氏は、「民生分野は全てARMコアに移行する」と明言した。


図1 富士通はCortex-Mシリーズを拡大していく 出典:富士通セミコンダクター

図1 富士通はCortex-Mシリーズを拡大していく 出典:富士通セミコンダクター


同社はもともとARM Cortex-M3コアを一般家電、AV機器、携帯機器に搭載してきた。M3コアをM0+およびM4コアにも広げていく(図1)。M0+コアでは、さらなる低消費電力が求められるセンサネットワークやヘルスケアなどのバッテリ用途やローエンドのFA分野などに応用していく。M4コアは産業用のハイエンドのFA機器やPLC、汎用インバータなどサーボ性能が要求される分野に向けていく。2013年度中にCortex-Mシリーズのマイコンを700品種に増やすと意欲的だ(図2)。


図2 現在の463製品を13年度中に700製品に強化 出典:富士通セミコンダクター

図2 現在の463製品を13年度中に700製品に強化 出典:富士通セミコンダクター


これまで富士通セミコンは463種類のCortex-M3マイコン製品を出荷してきた。その理由はCortex-Mシリーズには、タイマやインターフェースがたくさん含まれており、広いユーザーに向けた製品になっているからだ。

Cortex-M3を集積したマイコンFM3ファミリは汎用のマイコンで、13年度までに570品種に増やしていく(図2)。最大周波数は20〜144MHzであり、AV機器や白物家電向けで、電源電圧も1.8V、3.3V、5Vに対応する。FM3ファミリには、周波数144MHzの高性能仕様から基本仕様、低消費電力仕様、超低消費電力仕様と4つのグループがある。内蔵するフラッシュメモリの容量は1.5M/2Mと大きく、マルチファンクショナルプリンタ(MFP)やエアコンに応用する。

Cortex-M0+コアを搭載したFM0+シリーズは一般家電用途向けにはFM3シリーズとの互換性をもち、2.7〜5.5Vで動作する。電池駆動やセンサネットワーク向けには1.65〜3.6V動作で、待機電流が0.7μAと小さい製品を出す。この電池駆動仕様のマイコンには、24ビット相当のσ方式ADコンバータや電力量を演算する回路、温度センサ、タッチセンサコントローラも集積しているため、スマートメータに向いている。他にも火災報知機や血圧計などにも使える。

低消費電力マイコンとしては、ルネサステクノロジのRL78やテキサスインスツルメンツのMSP430などがある。ルネサス、TIとも、グレープフルーツに亜鉛板と銅版を差し込んでボルタ電池を作り、それぞれのマイコンを動作させているデモをいくつかの展示会で見たことがある。両者のマイコンと比べて「連続動作させている電力だけなら彼らの方が低いかもしれないが、スタンバイや動作を繰り返す実際の間欠動作ならFM0+の方が消費電力は小さい」と寺本氏は述べる。

また、ハイエンドのFM4コアでは、モータを細かく制御して消費電力を減らすための動作に向けている。高精度のインバータやPLC(プログラマブルロジックコントローラ)などには2Mサンプル/秒と高速サンプリングのADコンバータを内蔵した製品を向ける。またネットワーク用途にはシリアルインターフェースやEthernet、CAN、SDRAM用のインターフェースなども集積している。Cortex-M4コアには、CPUだけではなくDSPやFPU(浮動小数点演算ユニット)も集積している。

富士通セミコンの半導体事業でマイコンの比率は、民生や自動車、産業など全部含めて50%だという。マイコンのようなプログラマブルデバイスは、カスタムICと違って、早期開発でき、柔軟性が高く、利益も見込める商品である。それだけにルネサスはマイコンに注力することを決めた。富士通もマイコンへ注力、しかも海外展開が容易なARMのエコシステムを利用して海外展開を図ることで成長戦略が描けるようになった。3年後をメドに民生の海外売り上げ比率を50%に伸ばしたいと寺本氏は決意を語る。

(2012/11/13)

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