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スパンションに見る、2四半期連続増収増益達成の秘訣

2010年に経営破たんしたスパンションが再建から成長へ進み、さらなる成長戦略の絵を描き、順調に推移してきた。この第3四半期には前期比で2期連続増収増益となった。その秘訣について、同社CEOのジョン・キスパート氏(図1)に電話インタビューで聞いた。

図1 Spansion CEOのJohn Kispert氏 出典:Spansion

図1 Spansion CEOのJohn Kispert氏 出典:Spansion


フラッシュメモリメーカーであるスパンションの第3四半期(7〜9月)の業績は、売り上げが2億4000万ドルとなった。これは前四半期比3%増となり、引き続き増収増益となった。これは、第3四半期に落ち込んだ企業が多い中、健闘しているといえそうだ。営業利益は3100万ドル(非GAAP会計)となり、その利益率は13.1%となった。米国会計基準のGAAP会計に従う場合でも営業利益は1400万ドル、税引き後純利益も500万ドルの黒字となっている。ただし、2011年の第3四半期における売り上げ2億5800万ドルにはまだ及ばない。

好調の要因は、組み込み応用の分野に特化したこと、だという。この分野はNANDフラッシュ大手の東芝やサムスンが入っていない少量多品種の市場である。組み込みフラッシュ応用に限定するとスパンションの売り上げは前年同期比9%増だ、とジョン・キスパート氏は語る。かつてスパンションはNORフラッシュでNANDとまともに勝負に出て全面敗北し、会社更生法の適用に至った。この教訓を生かし、サムスン、東芝とガチンコ競争しない分野を注意深く探しながら、しっかりと市場をつかんできた。

NANDフラッシュの特長は大容量、低コストであること。これに対してNORフラッシュは低容量ながら高速であることだ。高速の特長を生かした市場開拓を進めてきたことに加え、NANDフラッシュと高速NORとの間を埋めるシリアルNOR、低容量のNANDを開発してきた。NANDフラッシュも製品化しているが、これも1/2/4/8Gビット品の低容量であり、東芝、サムスンとは競合しない。

組み込み市場では、通信や工業用、自動車用、民生などにおいて、監視カメラや病院外のヘルスケアモニター、デジタルカメラ、ホームゲートウェイの用途など350以上もの分野に渡って製品を世界中に出荷している。日本では自動車、工業用などが強く、ゲーム機(パチンコなど)用も好調だ。NAND大手2社と同じ顧客を共有している用途もある。例えば、デジタルカメラでは、NANDとNORが使われており、写真を記録する大容量NANDは東芝やサムスンから、NORはスパンションからそれぞれ入手する顧客がいるという。

スパンションのNANDフラッシュは、低容量だが高信頼性でもあるため、自動車用や工業用に使われている。書き換え回数は10万回以上、エラーレートは1E10以下、自動車用途では使用温度範囲が広い。車内用だと-40〜+105℃、エンジンルームだと-40〜+145℃というグレードである。


図2 バランスよく組み込みフラッシュを展開 出典:Spansion

図2 バランスよく組み込みフラッシュを展開 出典:Spansion


デザインイン(同社はデザインを勝ち取るという意味でデザインウィンと呼ぶ)は日本と米国が多いとする。地域別の売り上げ(図2)はアジア太平洋が36%、次いで日本が31%となっているが、これはあくまでも生産ベースでの売り上げである。デザインインをベースにする売上だと米国と日本が半々だという。NANDフラッシュにおいて第1四半期には200万ドル強の受注を請け負ったが、第3四半期は5000万ドル相当のデザインインを受注した。

スパンションは2011年に13種類の新製品を発表し、今それらはデザインインに入っている。例えば光ファイバのモデムやDSL/ケーブルモデム用に、SPIインターフェースを持つシリアルNORを使うという。今デザインインの製品は、民生では220種、工業用135種、通信85種、自動車50種、コンピュータ30種、携帯電話15種となり、バランス良く万遍なく使われるように広げてきている。NOR製品をカスタマの仕様に合うように調整しているという。

もともとAMDと富士通との合弁として始まったスパンションには日本人エンジニアが多く、同社にとって重要なアセットは人(エンジニア)だと言う。日本人エンジニアを重宝するのは質が高いためだとする。彼らのモチベーションを上げるために、二つのことを採り入れている。一つは仕事を広げることで面白いアプリケーションの開発に携われるようにすること、今日はゲーム用なら明日はネットワーク用、と次々と新しい応用を広げていく。やりがいのある仕事を提供することがモチベーションを高めるとする。もう一つは利益を上げることでボーナスを与えること。この二つは優秀なエンジニアを確保する上で欠かせない。

(2012/11/05)
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