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JEITA半導体部会、海外と同じ土俵を政府に要望、齋藤昇三新部会長語る

JEITA半導体部会(JSIA)の齋藤昇三部会長は、就任後初めてJSIAとして今後推進するテーマについて語った。現在、日本の半導体産業が世界と比べて伸びていないことに対して、政府への要望と産業界が果たすべき役割を明確に分けて述べた。

図1 JEITA半導体部会の齋藤昇三新部会長

図1 JEITA半導体部会の齋藤昇三新部会長


半導体産業は国際競争を行っている訳だが、輸出志向でありながら海外調達比率の低い産業であることを示し、輸出と内需に貢献する産業であることを訴えた。国際競争で勝ち抜くに当たり、海外企業が当たり前に受けている政策や国の仕組みを採り入れるように政府に要望していく。例えば、電力料金や税制などのインフラコストが他の国よりも高い、補助金がかなり少ない、など、少なくとも海外の企業と同じ土俵で戦えること、イコールフッティングを政府に対して訴える。

政府への要望は次のような手続きで行う。世界の半導体産業はWSC(世界半導体会議)を日米欧中韓台の6極持ち回りで毎年開催している。ここで決まった結果や要望を各地域の政府に送り、それを受けた政府が政府/当局間会合(GAMS)を毎年開催し、議長声明を出している。日本ではJEITA半導体部会がその役割を担う。

その一例を挙げよう。半導体チップをパッケージに入れたモノリシックICとマルチチップパッケージは半導体として扱われ、関税はかからない。しかし、モジュール基板のように複数の半導体チップと受動部品を搭載しモールド樹脂で固めたMCO(マルチコンポーネント)や部品内蔵基板モジュールなどは半導体とみなされず関税がかかっている。これを半導体と同じ扱いにして無税にしようという提言がWSCで決まった。この非関税化を各地の政府に要求していく。日本政府にも求める。


図2 垂直と水平構造のバランス、共同開発会社も必要 出典:JSIA

図2 垂直と水平構造のバランス、共同開発会社も必要 出典:JSIA


一方、半導体産業自身もビジネスモデルを替える必要があると述べる(図2)。海外企業は水平分業を中心としてきたが、日本企業は垂直統合でずっとやってきた。日本企業が全面的に水平分業に転換するのではなく、水平分業と垂直統合とのバランスをとることが重要なのではないかと述べた。そのバランスの中で、研究開発レベル、結成開発レベル、製造・生産レベル、販売・ロジスティクスレベルなどに分け、それぞれ共同開発会社というアライアンスのモデルを示した。また、現状では競争領域と非競争領域を分離できていないが、それらを分離して非競争領域で共同開発会社において活動するようにしたいと述べた。ただし、何を競争領域、非競争領域と定義するかについては、これから決めていくとしている。


図3 成長分野のスマート社会応用から求められる半導体 出典:JSIA、SIRIJ

図3 成長分野のスマート社会応用から求められる半導体 出典:JSIA、SIRIJ


成長分野はやはり、スマートグリッドやBEMSなどのエネルギー、ヘルスケア、安心・安全な社会、安全なクルマや交通、IT農業、といったスマート社会である。こういった社会を実現するために必要な半導体チップが、これから目指すべき技術(図3)の方向性だと新部会長は語る。

(2012/08/23)
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