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「計測器の世界にもムーアの法則を」、機能・性能+コスト・サイズを改善

ソフトウエアベースの計測器メーカー、米ナショナルインスツルメンツ(National Instruments)社は、NIWeek初日の8月7日(米国時間)に基調講演を行い、測定器も小型・高集積でムーアの法則に合うものにしようと述べた。ムーアの法則は電子機器を高機能・高性能+低コスト・小型にしたが、計測器はまだ小さくなっていなかった。今回、測定器2台分を一つの小型PXIモジュールに収めた。

図1 デスクトップ2台分のRF測定器を片手で持てる大きさに小型化したモジュール 左はNIのCEO兼社長であるDr. T(James Truchard氏)

図1 デスクトップ2台分のRF測定器を片手で持てる大きさに小型化したモジュール 左はNIのCEO兼社長であるDr. T(James Truchard氏)


同社システムプラットフォーム製品マーケティング担当バイスプレジデントのEric Starkloff氏(図1の右)は、計測器においてもムーアの法則を進めていこう、と呼びかけた。シリコンテクノロジはムーアの法則に則り、集積度を上げ、動作速度を上げ、機能を向上させてきた。メモリの集積度はkB、MBからGBに高まり、ロジックの動作周波数はMHzからGHzへと進展してきた。この結果、コンピュータは、メインフレームからパソコンになり、さらにタブレットにまで小型になってきた。1970年代に今のiPadを作ろうとすると数十億ドルもするだろうという。コンピュータや通信機器の小型化に対し、計測器はいまだに大きな形のデスクトップ型のままである。

しかも、70年代の計測器はスタンドアローンの装置だった。これがファームウェアによって機能を追加したり変えたりできるようになった。次は、このグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を使ってビジュアルに電子回路を設計・テストできるようにしたツールのLabVIEWをNIが開発した。

Starkloff氏は、NIはムーアの法則を2種類の応用に向けているという。一つはソフトウエアの膨大化である。モノづくりの世界はソフトウエア指向になっている。例えばアップルはiOSという一つのプラットフォームで、パソコンからiPohone、iPadなどさまざまなデバイスを作り、その上でさまざまなアプリケーションを走らせている。しかもそのプログラム行数は増加傾向にある。例えば、高級車では1億行にも達するという。NIではLabVIEWという一つのプラットフォームで、レゴを使った教育的プログラムから、ヒッグス粒子発見に寄与したフランスCERNにある加速器まで設計している。もう一つは、ハードウエアのプラットフォームであるPXIモジュールである。これは測定器に必要な機能を130.41mm高×18.42mm幅×171.91mm奥行の大きさに統一したモジュールである。このモジュールに異なる機能を載せることによって測定器の機能を拡張できる。

今回、発表されたPXIモジュールには、RF信号発生器とRF信号解析器、さらにFPGA回路も搭載している。従来なら机に2台の測定器が必要であった。FPGAは回路をユーザが変更できるようにするためのプログラマブルデバイスである。このモジュールはVST(ベクトル信号トランシーバ)と呼ばれるRF信号のテストを行う装置で、別の記事で紹介する。

(2012/08/08)
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