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オーストリアのAMS、新社名で一新、カーエレ市場をカスタムASICで対応

「クルマメーカーには、標準品ではなくカスタムASICで対応する」、と欧州でミクストシグナル半導体を手掛けるAMS(旧Austria Microsystems)社の自動車部門シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのBernd Gessener氏は述べる。同社は米国テキサスにあった光センサのTAOS社を昨年買収、このほど社名を変え、ロゴも変えた。

図1 新しいロゴ  3番目の文字Sを5という数字に見たて横にしている

図1 新しいロゴ 3番目の文字Sを5という数字に見たて横にしている


新しい社名であるAMSはもちろん、Austria Microsystemsの略であるが、さまざまな意味を持つ、とGessener氏は言う。Austria Makes Senseでもよいし、Analog Makes Senseでもよいとする。

ロゴでは、特に3文字目のS字に特徴があるという。Sを横に倒し、5という文字に近づけた。5という文字は四角い上の部分と丸い下の部分を合わせており、連続的な丸い部分をアナログ、パルスの四角い部分をデジタルと見立てて、それらをつないだように見えるという。さらに磁気センサや照度センサ、など5種類のセンサ製品を扱っているという意味もある。

車載システムでは、従来機械方式で行っていたシステムをエレクトロニクスで行うためにはセンサ、ECU、アクチュエータなどが必要になる。アクチュエータ自身はモータになるが、センサからモータドライバまでは半導体でECUを設計する。AMSはセンサを別チップにするとしても、センサインターフェースや、その信号処理、A-D変換、メモリ、DSP、コントローラ、モータドライブ、電源(パワーマネジメント)、保護回路、通信インターフェースなどを1チップに集積する。これがAMSのASICである。

これからの回路を汎用品で構成するのではなく、ASICにする意味はコピーされにくいためだとしている。ASICとはいえ、必ずしもハードワイヤード回路ではなく、ソフトウエアやプログラミング要素も含めている。車載のシステムに応じてカスタマイズできるようなASICにしている。例えばアクセルを踏む時のペダルの位置をコイルで検出し、スロットルバルブを開けたり閉めたりを制御する。ペダルの形状や角度、ばねの強さなどが違えばカスタマイズが必要になる。

ASICプロセスは、デジタルのCMOSプロセスを基本とする。これをベースに、さまざまなプロセスをオプションのモジュラー方式で組み入れる。その追加するモジュラーとして耐圧20V、50V、120Vの高耐圧プロセスとフラッシュメモリ、EEPROM(接合温度170℃)、SiGeバイポーラプロセスなどがある。これからの車載エレクトロニクスに使う電源を従来の12V系から48V系に変えようという動きはあるが、120V耐圧プロセスはこの動きに合わせている。すでに48V対応のDC-DCコンバータを開発中だという。この中に1〜2MHzで動作するコンバータとLDO電源を集積しているとしている。

ASICチップのパッケージ材料にも独自のモールドを使っているという。パッド上のメタルによっては、例えばAl-Au界面のように高い温度にはここに保護層を入れるなり独自のプロセスを使っている。AMSは設計からプロセス、後工程に至るまですべて手掛ける垂直統合の半導体メーカー(IDM)であるが、車載にフォーカスした企業である。

(2012/06/08)
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