セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

英国UKTIが開催したTechWorld2011、輸出促進を開始、10万人雇用目指す

|

英国内の中小企業と海外の企業との「お見合いの場」としての「Tech World 2011」が6回目を迎えた。これは、英国貿易投資総省(UKTI)が主催したプライベートイベントであり、セミナーあり、展示会あり、1対1のインタビューありという形をとる。単なる中小企業の支援ではなく、成長が期待されるICT分野に限ったイベントである。デジタルコネクティビティ、ヘルスケア、エネルギーと環境、モバイル用アプリといった分野の技術を揃えた。

図1 英国TechWorld 2011会場 お見合いの場だけに入場者を厳しく制限している

図1 英国TechWorld 2011会場 お見合いの場だけに入場者を厳しく制限している

世界的なエレクトロニクス・半導体の流れに乗って、英国で生まれたベンチャーを大きく育てよう、という政府の狙いがある。今の流れとは、ヘルスケアやエネルギー、環境といった、一見別々の分野に見える問題をエレクトロニクス・半導体を使って解決しようとするトレンドである。例えば、高齢化人口の増加、医療費高騰の問題、CO2削減、省エネルギー、スマートグリッドなどの社会問題を、半導体技術やスマートフォン、さまざまな電子機器をつなげるコネクティビティ、クラウドコンピューティングなどを有効に活用して、解決しようとするものだ。いずれもキモとなるのが半導体技術である。

英国の企業は、日本企業とは大きく違って、もともとグローバルなパートナーシップを求めている。ベンチャーを起こしても最初からグローバル市場、グローバルなサプライチェーンを活用する。このため、生まれたばかりのベンチャー企業を政府が支援し、海外の企業を紹介し、1対1のお見合いの場を提供する。インタビューのアレンジも行う。政府はたとえ1社であろうと民間企業のために働く、という滅私奉公の思想を英国政府は持っている。だから1民間企業のためのミーティングのアレンジも政府が行う。

今回のセミナーやインタビューでは、ヘルスケア分野において、日本が直面する高齢化問題を対岸の火事ではなく、テクノロジーを解決手段として半導体をコアとしたテレヘルスを2012年までに立ち上げようという動きがあった。一つの病院だけではなく、いろいろな医師からなるチームによる正確な診断とケアを追求し、しかも自宅の近くで医療を受けられるようにする。ICTを使って病状を診断し、記録し、情報を共有することで、過疎地や離島にいても、大都市と同じように病気を見てもらえる社会を目指す。遠隔地からの診断モニタリングに必要なのは、個人が耳にかけたり、ネックレスのように装着したりする小さな無線装置であり、そのカギを握るのが半導体チップとなる。

スマートシティもやはり、半導体テクノロジーを使って電力網、都市、地域コミュニティの付加価値を上げようというもの。エネルギー管理や見える化、スマートメーターなどどのようにして効率を上げ、家のエネルギーを下げようとして、スマートメーターとHEMS(ホームゲートウェイによる見える化システム)装置を2014年から2019年にかけて英国に4700万台を設置するという英国の目標を、スマートメーターのベンチャーであるOnzo社のNick Hunn氏が述べた。装置のサプライヤ側は、できるだけ消費エネルギーを減らすためエネルギーハーベスティング技術を使い、ウェッブベースでスマホのようなディスプレイで電力使用量をいつでもどこでも見えるようにするようになると見ている。全エネルギーを8%減らせばピークは5%シフトできると見積もっている。

政府の方針は今回、大きく変えようとしている。これまでは海外企業とのお見合いを支援してベンチャーを育てることに熱心だったが、これからは積極的に輸出して稼ごうという訳だ。2014年までに10万社を輸出企業に育てようという目標を持っている。これまで中小企業の28%は非輸出企業で国内市場しか見てこなかった。しかし、海外特に、東欧(ロシア、ドイツ、バルト3国)、アジア太平洋(中国、インド、オーストラリア)、アメリカ大陸(米国、ブラジル)、中近東アフリカ(エジプト、南亜アフリカ共和国)を重点的に輸出を強化する。これによって10万人の雇用と生むと期待している。

海外進出と言っても日本の場合は、大企業、1次下請け企業、2次下請け企業などが一緒についていき、現地で「日本村」を作っていただけにすぎず、海外進出とはいっても現地企業とのパートナーシップや関係は極めて薄かった。英国は独立した企業が独自に進出し現地での企業とのパートナーシップを築くことに腐心してきた。輸出の場合も同様で、独立した中小企業が単独で海外市場へ行き、製品を輸出できるように仕掛けてくる。

その第1弾が来年1月、米国ラスベガスで開かれるCES(コンシューマエレクトロニクスショー)に、政府団として参加する。英国は他の国と同様、金融危機以来、金融分野の回復は遅れているが、製造・サービスの産業界は輸出で世界と競争し技術や製品のワールドカップで戦おう、とCESのCEOであるGary Shapiro氏は述べた。

(2011/11/18)

月別アーカイブ