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CEATECでわかった、半導体ビジネスのこれからのあるべき姿

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CEATECが10月4日から開催されている。今回、出展しているシリコン半導体メーカーは、ローム(旧沖電気工業のラピスセミコンダクタ含む)と米Maxim社、米Intel社のみである。ルネサスはじめSTマイクロやTIなどは11月のET(Embedded Technology)に出る予定だ。Intelはここ10年間で初めての出展だ。

図1 Sponsors of Tomorrowと書かれたIntelブース

図1 Sponsors of Tomorrowと書かれたIntelブース


Intel ブースのうたい文句は、「Sponsors of Tomorrow」だ。すなわち「未来のお客様たち」を標語にしている。これまでパソコンとサーバー用のプロセッサに注力してきたIntelは、組み込みシステムに必要な無線技術やアナログ技術にも力を入れており、脱パソコンを鮮明に打ち出している。CEATEC初日の基調講演では、Intel社日本法人代表取締役社長の吉田和正氏が壇上に立ち、これからのICTテクノロジーの変革は、医療、農業、交通、教育、流通、エネルギーなど社会そのものに及び、その中でハードウエア(半導体)が開発をリードすると断言した。

吉田社長は、これまでIntelのCPUがパソコン社会を作り出し、社会を変えてきたことを例に出して、ハードウエアがソフトウエアを生み出し、そしてサービスを広げてきた。さらにハードウエアを開発することで、このスパイラルはどんどん広がっていく。これが社会の成長過程だとした。テクノロジーの進化はこれからも続き、決して終わりではない、と述べた。また日本はICT機器の使い方では世界をリードしており、日本からイノベーションが生まれていると強調した。Intelは日本のユーザーの意見を採り入れてマイクロプロセッサを設計してきた半導体メーカーであるから、ユーザーの声を聞く努力を惜しまない。

とはいえ、半導体を使う社会が膨張してきたため、半導体メーカーはIntelに限らずユーザー開拓がますます難しくなってきた。組み込み系プロセッサとして満を持して世に出してきたAtomプロセッサは消費電力がARMのそれよりもまだずっと大きすぎて期待ほど売れなかった。今回Intelがブースを構えたのは、まさに新しい成長分野を手探りしており、このために「未来のお客様たち」という表題を掲げた。

ここには、コミュニケーションとして家族同士がつながる家族掲示板(ハードはタブレット)、身体機能を増幅できるロボットスーツ(図2)、さまざまな色の洋服を着てみるバーチャル試着体験、テレビ会議システム、ウルトラブック、バーチャルリアリティなど、現在と未来の顧客になりそうな応用のデモを見せた。半導体チップそのものは全く展示していない。半導体メーカーでありながらこれからは半導体を使ったソリューションを提案することを展示会で示すことで、賛同してくれそうな顧客を開拓しようという訳だ。ETではプロフェッショナルなエンジニアしか来ないが、CEATECには主婦や学生もきており不特定多数の来場者から未来のソリューションの理解者を探そうとしているのである。


図2 Intelブースでのロボットスーツ(左)とバーチャルリアリティ(右)

図2 Intelブースでのロボットスーツ(左)とバーチャルリアリティ(右)


出展した外資系もう一社のMaximは、電解コンデンサを不要にするLED照明用のドライバIC、高感度の10点検出可能な静電容量式タッチセンサコントローラ、スマートフォンやタブレット用の低消費電力でプログラム可能なオーディオコーデック、Skype電話をテレビ画面から可能にする応用、など複数のユーザーが使えるソリューションを提案している。半導体チップの展示というより、それを使って何ができるという展示である。スペックは重視しない。重視するものは機能である。

もう一社、画像・映像処理プロセッサを開発している米西海岸のファブレスベンチャーAmbarella社は、会場に展示せず近くのホテルで、デモとミーティングの部屋をとり、チップを使ってできる未来を示した。デモで見せたものは、普通にビデオを写しながら、高速度撮影が可能、クルマのドライブレコーダに取り付ける解像度の高いカメラ、暗室をわざわざ作り、縞模様の生地の上に置いた人形をリアルタイムで撮影し、ノイズが全く見えない映像などだ。デジカメのディスプレイをアンドロイドベースのスマホとして使えるという応用も示した。いずれもチップというよりその応用を示した。

外資企業2社はIDMだが、最後はファブレスであり、ファブレスかIDMかという問題は実はどうでもよくなっている。ソリューションを提案できるかどうかがこれからの半導体ビジネスのカギを握るのであることを3社とも示している。そのために、ソフトウエアへの投資がカギを握ることを、インテル吉田社長は、マーク・アンドリーセン氏(インターネットブラウザの発明者)の言葉「ソフトウエアが世界を飲み込もうとしている」を引用しながら、これからの半導体ビジネスは、ハードウエア+ソフトウエア+サービス、作り込みが重要で国際協業できる人材を育成し、社会への思いやりの気持ちが新しい応用を開くと指摘した。

(2011/10/07)

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